東アジアのなれずし
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/23 02:03 UTC 版)
魚肉の貯蔵形態としてのなれずし(鮓)は東南アジアや中国南部に点々と見られる。中国では鮓(サ)、台湾の高砂族ではトマメ、トワメ、カンボジアではファーク (phaak)、タイではプラ・ハー、プラ・ラー、プラー・ソム、ボルネオのイバン族ではカサム (kassam)、陸ダヤク族ではトバ (tobah) と呼ばれる。この他にもラオスやフィリピン・ルソン島の一部、中国南部の苗族などのものが知られている。中国では河南の非漢人文化に発し、徐々に華北地方にも広がり南宋時代に大流行したが、元朝時代に急激に衰え、明朝、清朝にかけて消滅していき、中国南部の少数民族の中にだけ残ったとされる。元の支配層が魚に興味を示さなかったことに加え、米や酒などの乳酸発酵原料が不足していたため、鮓が膾や塩辛に近いものに変化していき、そちらに吸収されていったためと考えられる。明代の記録には、広西省の蛮族が飯を手で丸めたものに魚酢を乗せて食べるのをご馳走とした、という記録がある。 そのままで食べる場合もあるが、むしろ料理の材料として、スープ(独特の酸味が出る)や炒め物の具などに用いられる。中国においての作り方では、漬け込みに際して酒を入れ、そこに含まれる酢酸の風味を利用するほか、発酵をうながす麹や香辛料を混ぜるのが特色である。また朝鮮では発酵促進に麦芽を使用する特徴をもち、18世紀以降には辛みを添え、彩りともなるトウガラシを利用するようになった。その他、米や魚介類以外に野菜を用いたすしを作るのも朝鮮の特色であり、わが国の日本海側の各地にも、野菜を用いたいずしの形で影響を及ぼしているとみられる。中国広西チワン族自治区や貴州省などのトン族は中国語で「侗郷腌魚」などと呼ばれる草魚などのなれずしを食べる場合がある。
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