ちょうせん‐あさがお〔テウセンあさがほ〕【朝鮮朝顔】
ちょうせんあさがお (朝鮮朝顔)
チョウセンアサガオ
(朝鮮朝顔 から転送)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/10/23 21:07 UTC 版)
| チョウセンアサガオ | |||||||||||||||||||||
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チョウセンアサガオ
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| 分類 | |||||||||||||||||||||
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| 学名 | |||||||||||||||||||||
| Datura metel L. (1753)[1] | |||||||||||||||||||||
| 和名 | |||||||||||||||||||||
| チョウセンアサガオ(朝鮮朝顔) | |||||||||||||||||||||
| 英名 | |||||||||||||||||||||
| Angel's trumpet Devil's trumpet Metel |
チョウセンアサガオ(朝鮮朝顔; 学名: Datura metel)は、ナス科の植物。園芸用にはダツラ、ダチュラの名で広く流通しているほか、マンダラゲ(曼陀羅華)、キチガイナスビ(気違い茄子)、トランペットフラワー、ロコ草などの異名もある。原産地はアメリカ合衆国テキサス州からコロンビアにかけてとされるが[2]、熱帯アジア原産という説もある[3]。日本へは、江戸時代(1684年)に薬用植物としてもたらされ、現在は日本全国[4]で帰化・野生化したものが見られる。日本には、江戸時代に薬草として輸入された。渡来したのはシロバナヨウシュチョウセンアサガオよりも前だが、国内の個体数は少ない傾向にある[5]。有毒植物であることから、扱いに注意を要する。
リンネの『植物の種』(1753年) で記載された植物の一つである[6]。
名称
本種はナス科に属し、ヒルガオ科に属するアサガオとは別種である。単に花がアサガオに似ていることによる命名である。
薬用植物で毒性も著しく強く、「キチガイナスビ」といった別名を持つ。近年ではキダチチョウセンアサガオ属(ブルグマンシア属)の「エンジェルズ・トランペット」の名で園芸店で販売されている場合もあるので要注意である。なお、キダチチョウセンアサガオ属は、木本化する多年草のグループであり、明確に種類の異なるものである。
形態
一年草[3]。人家近くの荒れ地などに自生する[3]。草丈は1 - 2メートル (m) ほどで、茎は直立してよく枝分かれする[3]。葉は大型の広卵形で、長さ10 - 20 cm、幅7 - 15 cm、葉先は尖っている[3]。
花期は夏から秋にかけて[3]。長さ10 - 15 cmほどの漏斗状の白い花を咲かせる[3]。がくは筒状で、長さ4 - 5 cm、先が5つに分かれる。果実は球形で直径3 - 5 cm。短いとげが多数付いており、中に多くの種子が入っている[5]。熟すと割れて種子を飛ばす。
栽培
温暖で日照の多い気候を好み、暑さに強い。夏の間は旺盛に生育して、次々と花を咲かせる。
ダチュラ・メテルは一年草で、冬には枯れまるが、多年生の種は、地中の芽が凍結しなければ冬越しできる。
種蒔きの適期は4月から5月頃。遅れると株が大きく育たず、花数も少なくなる。ポット苗の植えつけは4月から6月が適期で、7月も可能。果実は直径5cmくらいで丸く、中に多数のタネが入っている。特筆すべき作業はないが、伸びすぎた枝や不要な部分は刈り込んでおくとよい[7]。なお、後述のとおり強い毒性があり、食べると中毒を起こすので、扱いには注意を要する。
薬用植物
チョウセンアサガオの薬効は古くから知られており、中国明代の医学書「本草綱目」にも、患部を切開する際、熱酒に混ぜて服用させれば苦痛を感じないとの記述がある。ベラドンナやハシリドコロなどと同様にアトロピンを含んでおり、過去には鎮痙薬として使用された。世界初の全身麻酔手術に成功した江戸時代の医師である華岡青洲は、本種を主成分とする麻酔薬「通仙散」を完成させた[5]。このことから日本麻酔科学会のシンボルマークにはシロバナヨウシュチョウセンアサガオ(曼陀羅華[8])の花が採用されている[9]。ほか、市販の医薬品内服剤(錠剤)「ストナリニS」(佐藤製薬)にダツラエキスが12mg配合されており、「副交感神経を遮断するダツラエキス配合でつらい鼻水、鼻づまりの症状を緩和します」とある[10]。
毒性
全草、特に種子に有毒なアルカロイド成分を含み、誤食すると瞳孔が開き、強い興奮、精神錯乱から、量が多いと死に至る[3]。成分はヒヨスチアミン (Hyoscyamine)、スコポラミン (Scopolamine) などのトロパンアルカロイドなどである。植物体の汁が目に入っても危険である[3]。なお、キダチチョウセンアサガオ属の「エンジェルス・トランペット」などの仲間もすべて有毒である[3]。
中毒事例
- 家の畑から引き抜いた植物の根を使って調理したきんぴらを食べた人(2名)が、約30分後にめまい、沈鬱となり、以後瞳孔拡大・頻脈・幻視等の症状を呈して入院。ゴボウと「チョウセンアサガオの根」を間違えて採取・調理し食べていた。
- 家庭菜園でチョウセンアサガオを台木としてナスを接ぎ木し、実ったナスを加熱調理し喫食したところ、意識混濁などの中毒症状を発症した[11]。
脚注
- ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Datura metel L. チョウセンアサガオ(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2025年10月23日閲覧。
- ^ POWO (2024). Plants of the World Online. Facilitated by the Royal Botanic Gardens, Kew. Published on the Internet; https://powo.science.kew.org/taxon/urn:lsid:ipni.org:names:314739-2 Retrieved 23 July 2024.
- ^ a b c d e f g h i j 金田初代 2010, p. 188.
- ^ “自然毒のリスクプロファイル:高等植物:チョウセンアサガオ|厚生労働省”. www.mhlw.go.jp. 2025年6月2日閲覧。
- ^ a b c 竹松哲夫、一前宣正『世界の雑草 Ⅰ -合弁花類-』 1巻、全国農村教育協会、1987年、455-456頁。ISBN 4-88137-031-6。 OCLC 672705102。
- ^ Linnaeus, Carolus (1753) (ラテン語). Species Plantarum. Holmia[Stockholm]: Laurentius Salvius. p. 179
- ^ “ダチュラの育て方・栽培方法”. 植物図鑑|みんなの趣味の園芸. NHK出版. 2025年10月23日閲覧。
- ^ 瀧井康勝『366日 誕生花の本』日本ヴォーグ社、1990年11月30日、300頁。 ISBN 4529020398。
- ^ “理事長就任挨拶”. 日本麻酔科学会. 2024年10月23日閲覧。
- ^ “ストナリニ®S【ストナリニ】|佐藤製薬”. www.stona.jp. 2024年11月20日閲覧。
- ^ チョウセンアサガオに接木したナスによる食中毒事例 食品衛生学雑誌 Vol.49 (2008) No.5 P376-379
参考文献
- 金田初代、金田洋一郎(写真)『ひと目でわかる! おいしい「山菜・野草」の見分け方・食べ方』PHP研究所、2010年9月24日、188頁。 ISBN 978-4-569-79145-6。
関連項目
外部リンク
- 自然毒のリスクプロファイル:高等植物:チョウセンアサガオ - 厚生労働省
- ヨウシュチョウセンアサガオ - 公益社団法人日本薬学会
- ダチュラ(朝鮮朝顔)の育て方・栽培方法|植物図鑑 - LOVEGREEN(ラブグリーン)
- ダチュラとは|育て方がわかる植物図鑑 - みんなの趣味の園芸(NHK出版)
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