時代による前提条件や価値観の変化
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/20 02:26 UTC 版)
「迷信」の記事における「時代による前提条件や価値観の変化」の解説
例えば「夜に爪を切ると親の死に目に会えない」という表現がある。夜に爪を切ってはいけない、というのは作法としてそうなのだとも指摘されており、儒教の教えだという。これを「夜爪(よづめ)」と言い、「世詰め(よづめ)」と語呂が同じで、短命という意味と重なり忌み嫌われた、と辞書などには書かれている。また夜爪は「夜詰め(よづめ)」につながるともされた(通夜のことを夜詰めとも言う)。迷信とされているものの中には、確かに単なる迷信にすぎないものもあるが、現代人が見落としているような意外な根拠がある場合もあるのである。昔は照明器具が不十分で、手元が見えず危険だった。また切った爪の行方も見えず、後でそれを踏むと痛いということもあった。いずれにしても、夜に爪を切ると何もいいことが無いから、夜に爪を切ってはいけないとされたという。 ただし、現在では明るい照明があるし、ケガをしない安全爪切りがある。だから夜に爪を切っても安全性に変わりは無い。江戸時代と現代では前提条件が異なっているので、当時は効用があった表現が今ではそうではない。上の「夜に爪を切るな」のように、経験則を総合して「おばあちゃんの知恵袋」やタブーが作られたということはそれはそれで良いとしても、それを聞く人はタブーをそのまま信じてしまう前に、そのタブーができた前提条件を正しく理解する必要がある、と西村克己は指摘した。 トンネル・坑山など坑内労働への女性の参加 日本では明治・大正期にトンネル工事や炭鉱労働に女性が従事していた記録が残っていたが、1928年(昭和3年)の鉱夫労役扶助規則の改正からトンネル工事や坑内労働には女性を参加させない方針(女人禁制)が貫かれており、それは「山の神を怒らせてしまう」という表現とともに継承されていた。労働基準法第64条の2は、原則として女性の坑内労働を禁止していたが(ただし、母性保護の観点からであり、具体的な内容は厚生労働省令で定めるものとされている)、男女共同参画社会の意識の浸透に伴い、そのような表現も含めて「女性差別だ」という声が上がり、「山の神を怒らせる」は迷信だと非難され、2005年(平成17年)にトンネル工事の女人禁制について規制の見直しが検討され、2006年の労働基準法改正で坑内での女性の管理監督業務が可能となった。
※この「時代による前提条件や価値観の変化」の解説は、「迷信」の解説の一部です。
「時代による前提条件や価値観の変化」を含む「迷信」の記事については、「迷信」の概要を参照ください。
- 時代による前提条件や価値観の変化のページへのリンク