撮影・編集技法
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/30 17:53 UTC 版)
「アルフレッド・ヒッチコック」の記事における「撮影・編集技法」の解説
ヒッチコックはカメラが全景をとらえてから対象に接近していくトラックアップという移動撮影法を多用した。その有名な使用例は、『第3逃亡者』のダンスホールの全景から犯人のドラマーの顔へと接近するまでをワンショットでとらえたクレーンショット、『汚名』の俯瞰で写した大広間の全景からイングリッド・バーグマンの手に握られた鍵のクローズアップへと接近するワンショット、『サイコ』の町の全景から情事が行われているホテルの窓へと接近する導入部のショットである。トリュフォーはこの撮影法による「最も遠くから最も近くへ、最大から最小へ」という表現の仕方が、ヒッチコック映画の法則のひとつであると述べている。こうした移動効果の応用として、『めまい』ではカメラをトラックバックさせながらズームアップすることで、めまいを覚えるような歪んだ映像を表現するドリーズーム(英語版)(めまいショット)という技法を創出した。 ヒッチコックはキャリアを通じて、さまざまな映像合成技術を使用した。イギリス時代の作品では、鏡とミニチュアを使って人物が大きなセットの中を動き回っているような映像効果を出すシュフタン・プロセスを採り入れ、『恐喝』の大英博物館での追跡シーンや、『暗殺者の家』のロイヤル・アルバート・ホールでのシーンなどに使用した。リア・プロジェクション(英語版)(スクリーン・プロセス)をよく使用したことでも知られたが、この技法は主に群衆シーン、列車や自動車などのシーン、『海外特派員』の飛行機の墜落や『見知らぬ乗客』のメリーゴーランドの暴走などのスペクタクルなシーンで使用されている。また、『逃走迷路』『裏窓』『めまい』の人物が高所から転落するシーンなどでは、トラベリング・マット(英語版)による背景と映像を合成する技術を使用した。この技術では合成画面の輪郭に青みがかったしみが出てしまうという欠点があったが、『鳥』ではそれを解決するためにウォルト・ディズニー・スタジオが開発した新しい合成技術ナトリウム・プロセス(英語版)を採り入れ、鳥が人間を襲うシーンの合成画面で使用した。 編集技法では、異なる場所で撮られたシーンを交互につなぐカットバックを、サスペンスを盛り上げる技法として多用した。似たような形のもの同士や、同じような動きをしたもの同士でショットをつなぐマッチカットも多用しており、その例は『北北西に進路を取れ』で主人公がヒロインを崖から引き上げると、寝台列車内のショットに切り替わるというラストシーンや、『サイコ』でジャネット・リーの瞳と排水孔をディゾルブ(英語版)でつないだシーンに見られる。また、トラッキングショットを使わずに連続的なジャンプカットで焦点距離を変化させることで、対象に近づいたり離れたりするアキシャルカット(英語版)も多用しており、その有名な使用例として『鳥』で眼をくりぬかれた農夫の死体を大中小のショットで近づいて見せるシーンが挙げられる。
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