山野の野焼き
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/17 03:07 UTC 版)
日本では伝統的に、春先のまだ草本の新芽が出ない時期に、野山の枯れ草を焼く事が多い。山焼きとも言う。また、田の畔や、河川敷を焼くことも野焼きということもある。 日本の自然の状態では酷寒地を除き、草原は森林へと遷移する。野焼きや採草、放牧を行うことで、この遷移がリセットされ、初期状態の草地に戻る。このように人為的に手を加えることで維持されている草原を二次草原(半自然草原)といい、採草地や放牧地として利用されてきたほか、特に野草地では特有の生物相を形成する。野焼きは、地下に生長点を持つ草本植物を生かしつつ、地表を覆う有機物や、地上に生長点を持つ木本植物を減らし、また炎などによる地温上昇や発芽誘導物質(カリキン)の生成などにより土中種子の休眠打破を促したり、炭による暗色化(アルベド低下)で地温を上昇させたり、有機物を無機塩類とすることで新たに出る若草のための肥料としたり、ダニなどの害虫を焼き殺す効果も期待される。 よく知られた山野の野焼きには、次のようなものがある。 奈良・若草山の山焼き 阿蘇の野焼き 別府市の扇山火まつり・十文字原の野焼き 渡良瀬遊水地の葦焼き 大室山の山焼き 秋吉台の山焼き 房総の野焼き 仙石原の山焼き 平尾台の野焼き 都井岬の野焼き 東富士演習場、北富士演習場の野焼き 岡山後楽園の芝焼き 国立公園など自然保護区における野草地の野焼きは、採草や放牧とあわせ、二次草原環境や生物多様性の維持に有用な管理手段のひとつとして行われており、環境省は自然再生推進法などに基づき支援している。草地の野焼きの量の正確なデータは把握されていないが、1,000ヘクタール以上の主要な野焼き実施地の5箇所(計24,400ヘクタール)を想定し、単位ヘクタール当たりの平均焼却量を10トンとする概算(日本国温室効果ガスインベントリ)があり、単純計算で244キロトンのバイオマス焼却が行われうると想定される。野焼きは土地の炭素貯留を減少させると一般的には考えられているが、阿蘇の二次草原(約16,400ヘクタールの野焼き地)では、文献上は千年以上前から(延喜式に基づく説)、土壌分析によれば一万年以上前から野焼きがおこなわれ、かつ耕起がおこなわれてこなかった結果、土壌に蓄積した炭と植生由来の有機物により、土壌炭素の貯留が高められていると考えられている。 野焼きに関する春の季語には「野焼」や「山焼」、「野山焼く」、「野火」、「畑焼」などがある。
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