寝言
『勇ましいちびの仕立屋』(グリム)KHM20 仕立屋が、「戦場の勇士である」といつわって、王女と結婚する。ところが、夜中に仕立屋が「上着を作れ、ズボンを縫え」と寝言を言うので、王女は夫がただの仕立屋であると知る。家来たちが仕立屋を捕らえようとするが、翌晩、仕立屋は眠ったふりをして、自分の武勇伝を寝言のように語る。家来たちは恐れて逃げ、仕立屋は王と認められる。
『猿源氏草紙』(御伽草子) 賤しい鰯売りの猿源氏は、「大名宇都宮弾正」といつわって、遊君螢火と契りを交わすが、寝言で「阿漕が浦の猿源氏が鰯買うえい」と言うので、正体がわかってしまう〔*しかし猿源氏は言葉巧みに言いつくろい、螢火は猿源氏を本物の宇都宮弾正なのだろうと思う〕。
『魂のジュリエッタ』(フェリーニ) ジュリエッタと夫ジョルジョは、結婚して15年になる。ある夜、夫は寝言で「ガブリエッラ」という女の名前を何度も呼ぶ。ジュリエッタは興信所に調査を依頼し、夫の浮気が明らかになる。思い悩むジュリエッタは、霊媒を訪ねるなどして、妄想・幻想に苦しめられる。夫は「しばらく1人になりたい」と言い残して出て行く。ジュリエッタは悲しみの中に、自由を感じる。
*寝言で「ナオミちゃん」と言う→〔同名の人〕2の『サザエさん』(長谷川町子)。
『アーサーの死』(マロリー)第11巻第8章 アーサー王の妃グィネヴィアが、愛人の騎士ラーンスロットを自室に呼ぶ。しかしブルーセン婦人の魔法によって、ラーンスロットはエレーン姫をグィネヴィアと思い込み、床をともにする。ラーンスロットには寝言をいう癖があり、眠ってから、自分とグィネヴィアとの愛を大声でしゃべり出す。グィネヴィアは隣室にいて寝言を聞き、怒ってラーンスロットを宮廷から追放する。
★3.「寝言を言った」という嘘。
『オセロー』(シェイクスピア)第3幕 イアーゴーの悪計により、オセローは「妃デズデモーナとキャシオーが不義をはたらいているのではないか」と、疑う。イアーゴーは、「キャシオーは寝言で、『デズデモーナよ。われわれの仲が誰にも知られぬよう、気をつけねばならない』と言い、寝ぼけて私に接吻しました」との作り話をする。オセローはそれを信じ、貞淑な妃デズデモーナを殺してしまう。
『光る海』(石坂洋次郎) 葉山和子と野坂孝雄は英文科の同級生で、互いに好意を抱いていたが、卒業後も、2人の仲はいっこうに進展しなかった。和子の妹・久美子と孝雄の弟・次郎が相談して、久美子は「姉が『孝雄さん、私を抱いて』と寝言を言った」と孝雄に告げ、次郎は「兄が『和子さん、キスしよう』と寝言を言った」と和子に告げる。さらに「日記を見た」「独り言を聞いた」など、さまざまな作り話をする。葉山和子と野坂孝雄は、それらが嘘だと知りつつ、妹や弟の作戦に踊らされたふりをして婚約する。
★4.眠ったふりをして、わざと寝言を言う。
『三国志演義』第45回 魏の曹操に仕える旧友・ショウ幹が訪れたので、呉の智将・周瑜は彼を歓待し、酒宴の後、同室に寝る。部屋には、魏の水軍の都督、蔡瑁と張允からの「曹操の首を取って献上します」と記した偽密書が置いてあり、周瑜は眠ったふりをして「ショウ幹よ。近日、曹操の首を見せてやるぞ」と、わざと寝言を言う。ショウ幹はこれを曹操に報告し、曹操は「蔡瑁と張允は裏切り者だ」と思い込んで、重要な戦力である彼らを処刑する。
★5.子供時代の寝言。
『二廢人』(江戸川乱歩) 井原は小学生の頃、よく寝言を言った。誰かがその寝言にからかうと、井原は眠ったままハッキリと問答した。珍しいので、近所の評判になるほどだった。そういう過去があったため、後年、友人木村の悪だくみによって、井原は自分を夢遊病者だと信じ込んだ→〔夢遊病〕5。
★6.いびき。
『いびき』(松本清張) 江戸時代。牢内には数十名の囚人が押し込められる。鼾(いびき)がうるさくて皆の安眠を妨げる者がいると、顔に濡れ紙をかぶせ、殺してしまうことがある。仙太は、大鼾をかく男だった。彼は島流しになり、仲間2人と島抜けをはかるが、大鼾ゆえに、隠れ場所を追っ手に知られてしまう恐れがあった。仲間は「仙太を殺そうか」と相談し、仙太はおちおち眠れない。彼は先手を打って仲間2人を撲殺し、思う存分大鼾をかいて熟睡した。
*美女の大いびき→〔眠る女〕5の寝肥(ねぶとり)(水木しげる『図説日本妖怪大全』)。
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