天然ゲル
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/21 06:12 UTC 版)
天然ゲル(native gels)は、分析対象物の天然構造が維持されるように、非変性条件で実行される。これにより、折りたたまれた、あるいは組み立てられた複合体の物理的な大きさが移動度に影響を与え、生体分子構造の4つのレベルすべてを分析することができる。生体サンプルでは、界面活性剤は細胞内の脂質膜を溶かすために必要な範囲でのみ使用する。複合体は、ほとんどの場合、細胞内と同じように結合し、折りたたまれたままである。ただし、1つの欠点は、分子の形状や大きさが移動度にどのように影響するかを予測することが難しいため、複合体がきれいに、または予測どおりに分離しない可能性である。この問題を特定して解決することが分取電気泳動(英語版)(QPNC-PAGE)の主要な目的である。 変性ゲル法とは異なり、天然ゲル電気泳動は負担のかかる変性剤を使用しない。そのため、分離される分子(通常はタンパク質または核酸)は、分子量や固有の電荷だけでなく断面積も異なり、全体的な構造の形状に応じて異なる電気泳動力を受けることになる。タンパク質は天然状態のままなので、一般的なタンパク質染色試薬だけでなく、特異的な酵素結合染色でも可視化することができる。 天然ゲル電気泳動の応用としての具体的な実験例には、タンパク質精製時にサンプル中の酵素の存在を確認するために酵素活性を調べることがあげられる。たとえば、タンパク質アルカリホスファターゼの場合、染色液はトリス緩衝液に4-クロロ-2-2メチルベンゼンジアゾニウム塩と3-ホスホ-2-ナフトエ酸-2'-4'-ジメチルアニリンを混合したものである。この染色液は、ゲルを染色するためのキットとして市販されている。タンパク質が存在する場合、反応のメカニズムは以下の順序で行われる。まず、アルカリホスファターゼによる3-ホスホ-2-ナフトエ酸-2'-4'-ジメチルアニリンの脱リン酸化から始まる(反応には水が必要)。リン酸基が放出され、水からアルコール基に置換される。求電子試薬である4-クロロ-2-2メチルベンゼンジアゾニウム(ファストレッドTRジアゾニウム塩)がアルコール基を置換し、最終生成物である赤色アゾ染料を形成する。その名前のとおり、これは反応の最終的な可視赤色生成物である。学部でのタンパク質精製の実験では通常、結果を可視化して精製が成功したかどうかを結論づけるために、市販の精製サンプルと隣り合わせてゲルを実行する。 プロテオミクスやメタロミクス(英語版)では、天然ゲル電気泳動が一般的に用いられる。けれども、ネイティブPAGEは、一本鎖高次構造多型分析のように、未知の変異について遺伝子(DNA)をスキャンするのにも使われる。
※この「天然ゲル」の解説は、「ゲル電気泳動」の解説の一部です。
「天然ゲル」を含む「ゲル電気泳動」の記事については、「ゲル電気泳動」の概要を参照ください。
- 天然ゲルのページへのリンク