大陸ヨーロッパにおける駅馬車
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/23 23:30 UTC 版)
「駅馬車」の記事における「大陸ヨーロッパにおける駅馬車」の解説
ディリジェンス (diligence) は4頭かより多くの馬を使った堅固な馬車で、フランス語において公共輸送を行う馬車のことを指す同義語であった。ドイツにおいてはシュテルヴァーゲン (Stellwagen) とかアイルヴァーゲン (Eilwagen) と呼ばれる少し違いのある派生形があった。ル・アーブルからパリまでのディリジェンスが、1803年にフランスを訪れた口うるさいイギリス人によってイギリスにおける駅馬車と徹底的に比較して描かれている。 武骨で洗練されていない車はほとんど想像もできないものである。前部では幌が車体に取り付けられており、3人の乗客を収容でき、車体から突き出した屋根により雨から守られている。この前側には2枚のよく油を塗って不快なほど臭う重い革製のカーテンが屋根に取り付けられている。広く高い内部は6人ほどを快適に収容でき、皮張りで、旅行者が小銭やたばこ、帽子、ハンカチなどを入れる小さなポケットが付いているが、これは同席の人で共用する微妙な保管場所である。屋根からは大きな網が張られており、帽子、剣、荷物を入れた箱などでいっぱいになっている。すべて便利にできており、全員が席に座ると、設備は決して不快ではない。屋根の上はインペリアルと呼ばれる場所で、6人か7人がここに乗り、また一塊の荷物が載せられているが、これは後部のバスケットにも収められて、荷物が車両自体の半分ほどの高さもある山となっている。荷物はロープや鎖などで固定され、大きな鉄の巻き上げ機で締め上げられているが、これ自体も馬車の重量の一部となっている。馬車の車体は木製の重い基礎に対してスプリングではなく皮ひもで固定されており、全体は7頭の馬で牽かれている。馬のうち1頭は御者が乗っている。 イングランドからの訪問者は、小さく頑健なノルマン馬が「我々の乗った重い馬車を牽いて、1時間に6から7マイルの速さで走った」と記録している。この速度で駅馬車は運河を行く船と競争になっていたが、ヨーロッパでは19世紀に鉄道網が広がるにつれて廃れて行った。鉄道網が伸びなかった地域では、バスが広まるまで駅馬車が完全に無くなることはなかった。
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