大統領の抵抗
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/26 06:16 UTC 版)
翌1996年1月には公務員に要求される言語能力が3段階引き下げられる一方、公務員と国会議員に対してエストニア語能力試験を課すことが定められた。同年の改正「国会議員選挙法」と「地方議会議員選挙法」によって、立候補者に対するエストニア語能力の要求は引き上げられ、1997年11月には議会が、政治家・公務員のみならず民間企業に対してもエストニア語能力を課す言語法第5条改定案を採択した。しかし、レンナルト・メリ大統領はこれへの署名を拒否して議会へ差戻し、さらに翌12月には議会が、差戻された法案を修正することなく再採択した。これに対してメリは 国会議員および地方議員に要求されるエストニア語能力基準を政府が策定する状況は、憲法第4条の定める権力分立に違反する 営利企業・非営利団体・経営者・外国人の専門家などに対し、私人との職務上の交流に際してエストニア語の取得要件を課す、という条文は過度に明確さを欠き、憲法第10条・第11条の定める民主主義社会・法治国家の原則に違反する 改定法案を通じて政府に与えられている広範な権力は人々にとって把握・予測困難であり、これも法治国家の原則に違反する として、改定言語法案の違憲確認訴訟を、最高裁(英語版)憲法審査部に提起した。そして最高裁憲法審査部も、 国会議員選挙法および地方議会議員選挙法(憲法的法律)が候補者のエストニア語能力基準を言語法(一般法)に委ね、さらにその言語法が基準策定・査定を政府に委ねることは、憲法第4条(権力分立)・第87条(政府の権限)・第104条(憲法的法律の採択・改正手続き)に抵触する 改定言語法案の条文は憲法上の権利および自由の行使を侵害し得る として言語法第5条改定案に対する違憲判断を下した。さらに続いて、当選を取消されたロシア系地方議員が提起した違憲確認訴訟によって、現行の地方議員選挙法と言語法に対しても違憲判決が下された。選挙法と言語法は翌1998年12月に改定され、加えてCSCEの後身である欧州安全保障協力機構 (OSCE) の勧告に従い、2001年11月の選挙法改定で立候補者の言語能力は要件ではなくなった。しかし同時に、議会の審議ではエストニア語を使用することも確認された。
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