声調と旋律
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/11/05 07:35 UTC 版)
タイ語はタイ・カダイ語族の言語で、中国語などと同様に声調がある。タイ語の場合は5種類の声調があり、発声の音程が変わることで意味も変わる言語である。たとえば「新しい木材は燃えない」はタイ語で「ใหม่ ไม้ ไม่ ไหม้」と言い、これを片仮名表記すると「マイ(新しい)マイ(木材)マイ(否定の接頭詞)マイ(燃える)」であるが、それぞれの「マイ」は声調が違い、タイ文字の綴りと声調記号により単語の持つ意味が明確になり、聞く者はその単語の音程で意味を把握する。 ところで、こういった性格を持つタイの言語で歌を歌うときに、メロディーにタイ語を乗せると、作曲者の意図する旋律とは別に、タイ単語の持つ声調に従った音程の上下が加わることになる。声調を犠牲にしてメロディーを優先すると歌詞の意味が不明になるばかりではなく、まったく違った意味になってしまうので、声調が犠牲になることは、ない。 したがって、原メロディーの意図しない音程が挟み込まれることは一般に当然のことで、この音程がアヴォイド・ノート(回避音)になってしまうこともしばしばである。このアヴォイド・ノートの出現が大胆で特異な和音解釈を思わせ、タイ歌謡独特のフレージングの大きな特徴になっている。アヴォイド・ノートは多くの場合、テンション・ノートとして構成される。しかし、近年では稀に構成音を転回させて、いわゆる代理コードと解釈して演奏されることもあって、これは西暦2000年前後からタイの演奏者の水準が劇的に向上し、音楽理論の理解が進んだことによる。 このテンション・ノートや代理コードの使用も相俟って、タイの歌謡曲はジャズとの親和性が高い。したがってジャズふうに編曲した楽曲も最近では多く見受けられる。しかしこれはルククルンに限ったことではなく、タイ語の歌詞で歌われる歌曲に共通することである。とはいえ、特にルククルンはその成り立ちも含めジャズの影響が色濃い。
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