声調発生
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/10 15:43 UTC 版)
声調発生 (tonogenesis) は、非声調的な対立 (例: 無声音/有声音) から声調の対立が生じる通時的な音変化を指す。 この現象に早くから着目したのが、フランスの言語学者アンドレ=ジョルジュ・オドリクールである。 オドリクールは、“De l’origine des tons en vietnamien (ベトナム語における声調の起源について)" と題された1954年の論文で、東・東南アジアの諸言語に見られる声調の歴史的な変遷と、ベトナム語の系統発生にまつわる問題について扱っている。そこではまず、中古中国語・ベトナム語・タイ語などの音韻史において、無声音/有声音の区別が頭子音から消失した一方で、新たな声調の区別が発生したと論じられる。なお、有声阻害音が低調の無声音へと変化したのは、その後、チベット語といった他の言語でも報告されている。 さらにオードリクールは、声調言語のベトナム語を、非声調のモン・クメール語派と比較した上で、ベトナム語の曲線声調が、音節末子音の消失に伴って出現した可能性を指摘した。 ベトナム語と平行的な *-ʔ や *-sからの声調発生は、上古中国語が中古中国語に発展した過程でも起こったと推定されている。その証拠は、「對馬」や「波羅奈」のような固有名詞の漢字表記や、同系統のチベット語と共通する派生プロセスなどに認められる。
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