中国語の上古音の再構に関する他の功績
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「アンドレ=ジョルジュ・オドリクール」の記事における「中国語の上古音の再構に関する他の功績」の解説
中国語歴史音韻論の分野に関するオドリクールの功績には、体系的な声調発生論以外に韻尾 *-s と両唇軟口蓋音の再構がある。 オドリクールは詩経の押韻のいくつかのパターンを明らかにした。中古音で入声の字は去声と押韻する(例:「乍」(去声)と「昨」(-k で終わる入声)、「敝」(去声)と「瞥」(-t で終わる入声))。カールグレンはこの現象をもとに有声韻尾 *-d *-g を立て、いくつかの場合に *-b も立てた。オドリクールの理論では、去声が *-s で終わっていたと考えるため、-k・-t と押韻する字は音節末に *-ks・*-ts のような子音連結を再構することで説明される。さらに、歴史的形態論の見地からもオドリクールの声調発生論によれば(とくに名詞化接尾辞として) *-s 接尾辞が再構される。これはシナ・チベット語族の保守的な言語(例:チベット語)の接尾辞と同源であると考えられる。 第2の主な発見は、上古音に両唇軟口蓋音があったとする仮説よりなる。 「…学者は『Analytic Dictionary』にみられるいくつかの韻(たとえば -iʷei [MC *-wej] 齊、-ʷâng [*-wang] 唐、-iʷäng [*-jweng] 清、-ʷâk [*-wak] 鐸、-iʷet [*-wet] 屑。)が軟口蓋音声母(/k/、/kʰ/、/g/、/x/、/ŋ/)にのみ現れるという事実を見過しているように思われる」(角括弧内の中古音はバクスター(1992)によって追加したもの)。 この考えは後に上古音の母音体系を改良するために用いられ、最近の上古音の再構で一般的な六母音体系の基礎を築いた。
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