堆砂による土砂動態の変化
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/01 20:21 UTC 版)
「ダムと環境」の記事における「堆砂による土砂動態の変化」の解説
河床低下 上流域で生産された土砂が、ダム湖で止まることなどにより、発生する現象。砂防設備や森林整備などの土砂止め工事の影響も多いが、ダムの持つ土砂止めの機能も大きな要因となる。下流河川の土砂含有量が減り、河床の砂礫の需給バランスが崩れることにより発生する。もともと土砂生産が多く天井川であった河川でも著しい河床の低下が見られる。河床にある砂礫の中でも、特定のサイズの砂が流失することが多い。 アーマー化現象 河床低下で河床の砂礫が減り、流出しにくいサイズの礫が、ダム湖内で沈殿しにくい微小なシルトや粘土質のもので固められ鎧のように強固になってしまう現象。河床の生物が、巣を作る際にシルトを固め、より強固な状態へとなることもある。ダム湖内で土砂サイズの含有量の選別が起こることも大きな要因として指摘されている。 河岸侵食 河床低下などの複合的な要因で、流水の流れる高さが変わることや、土砂含有量の少ない水が土砂生産を促すことにより河岸が削られる現象。これにより、新規堤防強化事業や橋梁付け替え工事の必要が生まれる。 海岸侵食 河川の持つ土砂生産量が変化することにより海岸の土砂の需給が変化し海岸線が削られること。複合的な要因がありダムのみに起因しているのではないが、河川が漂砂に与える影響は大きい。砂浜や干潟の土砂は堆積と侵食の微妙なバランスで成り立っており、河川からの土砂流下量の減少は海岸侵食に影響する。 ヘドロ ダム湖底には上流より多くの有機物が流入する。本来ならば河口域まで流され、次第に分解していくはずのものであるが、それらが湖底に堆積し、撹拌の行われないことによる酸素の少ない条件下で分解することで、次第にヘドロとなる。古いダムには、多くのヘドロが堆積し、これが大きな問題となっている。放置すれば水深を減らし、水質を悪化させる。かといって、下流に流せばより広範囲にわたって汚物を流すことになる。したがって、出し平ダム(黒部川)で行われた第1回連携排砂事業は大量のヘドロを下流に流し、漁業に深刻な影響を与えた。また、熊本県で予定されている荒瀬ダム(球磨川)撤去についても、この検討が十分になされていないとの指摘されており、撤去により下流に与える影響が懸念されている。
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