堆砂との格闘
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/01/01 02:25 UTC 版)
こうして天竜川水系には治水・利水・発電を目的に多数のダムが建設された。だが、これに伴う新たな問題がもたらされた。堆砂と海岸侵食である。天竜川は静岡糸魚川構造線及び中央構造線付近を流れている。このため、古来より流域の山腹は崩落が激しく、大量の土砂が天竜川を経て遠州灘に運ばれてきた。そうして形成されたのが中田島砂丘であり、ウミガメ産卵の場所になっている。ところが天竜川流域に多数のダムが建設されるに及んで、ダムの堆砂と砂丘の後退とが新たな問題となった。特に泰阜ダムでは許容堆砂容量の約84パーセントが既に砂で埋まり、小渋ダムや美和ダムでも堆砂による影響が現れはじめた。屈指の人造湖である佐久間湖を持つ佐久間ダムにおいてさえ、200年間無策のまま放置すれば佐久間湖が完全に土砂で埋まると予測され、堆砂対策が喫緊の課題となっていた。土砂流入防止のための砂防事業や海岸整備事業は行われていたものの、根本的解決法である堆砂の除去と流砂促進については有効な対策を打てずにいた。 1990年代にさしかかると、土木技術の進展を背景に本格的な対策が取られ始めた。1989年(平成元年)の第二次三峰川総合開発事業において美和ダムの恒久堆砂対策が行われた。それは、貯砂ダムと分流堰をダム湖上流に建設し、排砂トンネルを通して流砂促進を図るというものであり、2001年(平成13年)に完成した。それでも2002年(平成14年)11月17日付けの朝日新聞報道によれば、堆砂率上位を占めていたのは天竜川水系のダムであった。2004年(平成16年)からは、天竜川最大規模の佐久間ダムにおいても国土交通省中部地方整備局による「佐久間ダム再開発事業」が進められている。これは、洪水調節機能付加に加えて流砂促進のためのバイパス施設を整備して天竜川下流部へ堆砂を流し、中田島砂丘の復元を図ることを目的としたものである。
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