国内優先権
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/03/25 19:22 UTC 版)
一部の国では国内における優先権(国内優先権)を法的に定めている。これは元来、国際的に認められた優先権制度に関して国内的にもバランスをとるという意味がある。 例えば、日本では特許法41条、実用新案法8条に国内優先権が規定されている。 これにより、ある出願(先の出願)から1年以内に、それを基礎として指定し別の出願をすることができる(複数の出願を指定することもでき、その場合最先の出願日が優先日になる)。先の出願から1年4月経過すると先の出願は取り下げたとみなされる(特許法42条1項、同法施行規則28条の4第2項(実用新案法施行規則23条2項で読み替えて準用)、実用新案法9条1項。なお先の出願をPCT・国内で共に優先権の基礎としていた場合には、国内でのみなし取り下げとともに国際的にも取り下げたとみなされるので、PCT出願時に日本への指定を除外するか、PCT出願後に日本への指定を取り下げる必要がある)。 先の出願と後の出願には内容の同一性が必要であるが、後の出願内容は先の出願内容を基本として発展させた形であることが認められる。出願後の補正では新規の内容の追加は認められないのに対し(特許法17条の2第3項)、優先権を主張して新たに出願する場合にはこれが可能である。しかも、新規性や進歩性の判断は先の出願時点に遡って行われるので、優先期間に先の出願内容に相当する発明等が公知化または他者により出願されても、それらを理由として拒絶されることはない(特許法41条2項)。従って、先の出願後にその内容を上位概念に拡張できる(より広い権利が期待できる)ことがわかった場合や、本質的に共通する複数の出願を統合したい場合などに、国内優先権がよく利用される。ただし、新規追加部分に関しては国内優先権は認められないので(特許法第41条2項参照)、新規追加部分の新規性や進歩性の有無は、後の出願の出願時を基準として判断される。平成14年(行ケ)第539号「人工乳首事件」 (PDF) は、実施例を補充し特許請求の範囲は実質上変更していないにもかかわらず、国内優先権の主張が否認された例として評価されている裁判例である。 特許権の存続期間は後の出願を起点とするので、先の出願から見れば国内優先権の主張により特許権を「延命」させる効果がある。
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