問題発生の背景
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/25 23:43 UTC 版)
「ブラウンフィールド」の記事における「問題発生の背景」の解説
問題が発生する背景として議論されている内容は以下の通りである。 浄化対策費用が、汚染していない場合の土地の価格よりも上回る場合がある。このケースが最も多いと考えられている。 浄化費用が捻出できない場合がある。以前は有害物質でなかったため無対策で使用していたが、それが有害物質へと指定が変更となったため取り扱い等に関しては対策を行った。しかしながら地中にはそれら残骸が残っていた。これを対策しようにも、特に中小企業の場合、対策費用が事業規模と比較して甚大なものとなり、結果的に放置せざるを得なくなる。 汚染浄化目標(または許容値)を、その土地の利用目的に応じて変えることができない。現在は、どのように土地を再利用する予定であっても、土壌環境基準値が浄化目標(ゼロリスクベース)となっている。土地の利用目的によっては、利用に基づくリスク評価のもと、利用目的ごとの浄化目標(または許容)値を設定することにより、対策費用を低下させ、土地の利用を進めたいとする考え方。ゼロリスクのために対策の費用対効果が高額となり、経済的メリットが享受できず放置現象が発生すると考えられている。 一方このように土地の用途別に目標を設定するという考え方には、反論もある。土地に用途別浄化基準を設定することは、将来にわたって土地の利用形態が固定されることを意味する。また土壌環境機能について、それが土地の私的財産に含まれるとはいえ、現在の土地利用者の考える利用法に限定し、その時のリスク評価に基づく基準に当てはめる(リスクは社会情勢で変化する)ことで、対策方法によっては土壌環境機能を二度と享受できなくしてしまうことが、土地資源として適切なのかという考え方である。 土壌汚染対策法では、汚染された土地であっても、浄化せずに、そのまま監視していれば良い場合があるため、無理して費用をかけずにそのまま置いておくことができる。 土壌汚染対策法に定められた調査を実施したとしても、必ずしも汚染が発見できるとは限らない。これは「汚染がない」ことを証明する調査ではなく、「対策の必要性および対策方法を決めるための調査」のみを定めていることによる。当然ながら、後に汚染が発覚した場合、同法に定める調査の実施を理由に責任を免れることはできない。同法の調査だけを実施したとしても、公害防止実施の抗弁の原則である「調査当時の科学的水準と照らし合わせて、最適な調査を実施した」と言うことができない。これは土地に対する汚染評価として調査内容が不十分なためである。すなわち負の外部性(外部不経済)の評価・費用算定ができないことを意味する。結果的に、調査方法が定まっていないことによる不安要因(開発リスク)により、放置現象が発生すると考えられる。 定められた調査方法に「抜け道」が多いため、調査会社によって調査結果が異なることがある。よって上記と同様に、調査をしているにもかかわらず、外部不経済の評価が評価者によって極端に異なる。 土壌は不均一に分布しているため、調査方法を一律に定めることはかなり難しい。法令に定めているようなどのような土壌に対しても均一で行われる調査方法では、土壌汚染の評価は、元々できるものではない。よって、調査方法を根本から変えない限り、この問題を解決することができないとする考え方もある。
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