和語と漢語の結合
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/05/16 22:48 UTC 版)
日本において「国語」と認識されている語彙は、固有語である和語と、上代〜平安初期にかけて中国語から借用された漢語とその字音を模倣して発生した和製漢語、さらにそれらの結合した複合語に分類することができる。 和語と漢語が結合した語彙を総称する用語にあまり一般的なものはないが、必要に応じて「和漢混淆語」「和漢雑糅語(わかんざつじゅうご)」などと呼ぶ。また、中国文学者の高島俊男は、「白菊夕刊語」と呼んだことがある。 漢語が日本に流入して間もないころは、漢語は外国語と認識されており、和語と漢語が結合して語彙化した例は限られていた。しかし、時代を経るにつれて、こうした例は徐々に増加していき、平安中期に著された『源氏物語』には「院方(ゐんがた)」、「絵所(ゑどころ)」という語が出現し始め、鎌倉時代における『平家物語』には「座敷(ざしき)」、「分捕(ぶんどり)」など現在でも使用される語が登場している。 江戸時代には、「関所(せきしょ)」、「宿場(しゅくば)」のように複合語と意識されにくい語も使用され、現代では「台所(だいどころ)」、「気持(きもち)」、「場所(ばしょ)」、「荷物(にもつ)」などと基礎語彙の一部にも和漢混淆語が浸透している。 こうした現状で、和語、漢語、和漢混淆語が意識的に区別される場面はごく限られている。一方で、国語の教育水準が向上し、漢字文化に親しむ者が増えつつある現代においては、和漢混淆語が「非模範的である」あるいは「誤用である」と認識されるようになった。今日では複数の漢字で構成される熟語のうち、上の字が音読みされ、下の字が訓読みされる場合を「重箱読み」、反対に上の字が訓読みされ、下の字が音読みされる場合を「湯桶読み」と呼び、慣用になっているもの以外は、使うべきではないとする意見もある。特に日本語の乱れが問題視されるようになってからは、極端な例ではあるが「『肉汁』を“にくじる”と読んだ場合、“にく”は音読み、“じる”は訓読み、すなわち湯桶読みをしてしまっており、不適切な読み方である。本来ならば“にくじゅう”と読むべきだ」などと主張する者すら存在する。 なお、本来は漢語である「化学(かがく)」、「私立(しりつ)」、「買春(ばいしゅん)」などの語を同音異字語と紛らわしいからという理由で、それぞれ「ばけがく」、「わたくしりつ」、「かいしゅん」などと意図的に音読みと訓読みを混ぜて読む場合もあるが、これらは和漢混淆語ではない。
※この「和語と漢語の結合」の解説は、「混種語」の解説の一部です。
「和語と漢語の結合」を含む「混種語」の記事については、「混種語」の概要を参照ください。
- 和語と漢語の結合のページへのリンク