各国の建築士制度
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/09 07:11 UTC 版)
欧州の産業革命により発展した工業技術は明治維新の日本に持ち込まれ、それまで木造が主流であった日本に組石造や鉄筋コンクリート造の建築物が建てられるようになった。 従来の日本では大工の棟梁が設計と施工を統括していたが、欧州では設計と施工の職域が独立していた。 明治維新の先進的な建築では技術の見識を持つ建築家が設計を担当し施工者を指導して目的の性能を持つ建築物を完成させる分業が始まった。 その後は鉄骨造や膜構造など建築の構法が多様化し職域の専門化と分業化が進んでいる。 近年では意匠と構造と設備に独立した統括者を置くなど設計監理業務が組織化し企業化する傾向にある。 建築物の製造者責任と完成後の維持保全についても社会的関心が高まり、資格者である1人の建築士が全ての責任を負うべきか議論が必要になっている。 日本の建築士制度(1950)の特徴は建築設計者の資格と技術者資格が一体になっていることで, このため建築士の登録者数が多いとされる。日本の建築士の数と欧米諸国の建築家の数を比較すると, イギリス約3万人,アメリカ約8万人に対して、日本の1級建築士の数は32万6000人(2007)を超えており, 日本の建築士の数は圧倒的に多い。これは建築士制度に更新制がない生涯資格であること、建築設計者だけでなく、建築関係の技術者を含んでいることなどのためであるとされている。MABコンサルティング代表の中小企業診断士で(社)中小企業診断協会東京支部建設業経営研究会幹事、NPO消費者住宅フォーラム理事の阿部守や樋口忠彦新潟大学名誉教授など、土木技術者・土木工学者で取得しているものや坂井信行や司波寛など土木出身で都市計画業に従事しているもの、塩田敏志や佐々木葉二など、ランドスケープアーキテクトで取得しているもの、構造エンジニアや建築設備技術者、建築施工技術者などまで日本の一級建築士の中には責任ある立場で建築設計等の業務を行っていない者が含まれており、諸外国のアーキテクトとは性質が違うことが指摘されている。この問題について、現に一級建築士事務所の開設者かつ管理建築士である者をもってアーキテクトとするのが妥当であるとの立場では、日本におけるアーキテクトは人口1万人あたり5人程度となり、諸外国のアーキテクト人口比率と同程度の数値となるが、構造設計事務所や建築設備設計事務所の開設者の建築士事務所も、一級建築士の所属する職場、例えば官公庁や自治体建築部局、建設会社設計部所や一級建築士事務所登録をする住宅メーカーや不動産会社なども管理建築士を有する一級建築士事務所である。
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