原型と構成
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/12 05:34 UTC 版)
『ジャバウォックの詩』の第1節は、本来はキャロルが自分の家族のために定期的に制作していた肉筆回覧誌『ミッシュマッシュ』"Mischmasch"で発表された作品である。この第1節は『古英語詩の断片』"Stanza of Anglo-Saxon Poetry."と題される、あたかも「発見された古詩の断片」のように、2つの言語を組み合わせ、古い英語アングロサクソン語のような響きを持つ造語で書かれた「奇態なる」詩の断片で、作者は後のハンプティ・ダンプティとは別の解釈による翻訳を幾つかの単語に施していた。例えば、「ラース (rath)」はツバメとカキを主食とし直立した頭と膝で歩ける足を持つ緑色の陸亀の一種であると記述されている。 1957年3月1日のタイムズ文芸書評と1962年のルイス・キャロル・ハンドブックにおいて、ロジャー・ランセリン・グリーンは、『ジャバウォックの詩』の第1節以外の部分は、古代ドイツのバラッド「巨人山脈の羊飼い英語版の記事」に触発されたのではないかと指摘している。この叙事詩の中で、若い羊飼いは怪物グリフィンを打ち倒す。このバラッドはアリスの物語が発表される数年前、1846年にルイス・キャロルの親族マネラ・ビュート・スメドレイによって英訳、発表された。ただ、マーチン・ガードナーはグリーンが、「書き方とものの見方」をパロディしているもの、両者の類似は「具体的に上げることはできない」とするのを引き、この詩が何のパロディであるかは「はっきりしない」と言っている。 『ジャバウォックの詩』の特に面白い点は、多数のナンセンスな単語を含んでいながらも、詩の構成は古典イギリス詩に完璧に一致しているところである。センテンスの構成は精密であり(逆に言えば、非英語による再現は困難である)、詩としての形式が観察でき(例えば、四行詩、押韻、弱強格等)、事件の流れの中にある何らかの「物語」が認識される。『鏡の国のアリス』でのアリスの言によれば「なぜかしら、頭がたくさんの気持ちで一杯になるみたい――なにがどうなってるのかも、さっぱり分からないのに!」という「物語」である。
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