半導体の表面準位
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/03/07 08:35 UTC 版)
ほとんど自由な電子の近似を用いて、狭ギャップ半導体の表面準位の基本的特性を導出することができる。この場合、半無限線形連鎖モデルも有用である。しかし、ここでは原子鎖に沿ったポテンシャルはコサイン関数として変化すると仮定する。 V ( z ) = V [ exp ( i 2 π z a ) + exp ( − i 2 π z a ) ] = 2 V cos ( 2 π z a ) , {\displaystyle {\begin{alignedat}{2}V(z)&=V\left[\exp \left(i{\frac {2\pi z}{a}}\right)+\exp \left(-i{\frac {2\pi z}{a}}\right)\right]\\&=2V\cos \left({\frac {2\pi z}{a}}\right),\\\end{alignedat}}} 一方で、表面ではポテンシャルは高さV0のステップ関数としてモデル化される。シュレーディンガー方程式の解は2つの範囲z < 0とz > 0に対して独立に得る必要がある。ほとんど自由な電子の近似の意味では、z < 0で得られる解はブリルアンゾーンの境界 k = ± π / a {\displaystyle k=\pm \pi /a} から離れた波数ベクトルに対して平面波の特性を持つ。ここで分散関係は図4に示すように放物線になる。ブリルアンゾーンの境界ではブラッグ反射が起こり、波動ベクトル k = π / a {\displaystyle k=\pi /a} と k = − π / a {\displaystyle k=-\pi /a} からなる定在波が生じる。 Ψ ( z ) = A e i k z + B e i [ k − ( 2 π / a ) ] z . {\displaystyle {\begin{aligned}\Psi (z)&=Ae^{ikz}+Be^{i[k-(2\pi /a)]z}.\end{aligned}}} G = 2 π / a {\displaystyle G=2\pi /a} は逆格子の格子ベクトルである(図4参照)。今回対象とするものの解はブリルアンゾーンの境界に近いため、 k ⊥ = ( π / a ) + κ {\displaystyle k_{\perp }={\bigl (}\pi /a{\bigr )}+\kappa } (κは少量)とする。任意定数A,Bはシュレーディンガー方程式への代入により求められる。これにより固有値が求まる。 E = ℏ 2 2 m ( π a + κ ) 2 ± | V | [ − ℏ 2 π κ m a | V | ± ( ℏ 2 π κ m a | V | ) 2 + 1 ] {\displaystyle {\begin{aligned}E&={\frac {\hbar ^{2}}{2m}}\left({\frac {\pi }{a}}+\kappa \right)^{2}\pm |V|\left[-{\frac {\hbar ^{2}\pi \kappa }{ma|V|}}\pm {\sqrt {\left({\frac {\hbar ^{2}\pi \kappa }{ma|V|}}\right)^{2}+1}}\right]\end{aligned}}} このことは禁制ギャップの幅が2Vで与えられるブリルアンゾーンのエッジにおけるバンド分裂を示す。異なるバンドに起因する結晶深くの電子波動関数は Ψ i = C e i κ z ( e i π z / a + [ − ℏ 2 π κ m a | V | ± ( ℏ 2 π κ m a | V | ) 2 + 1 ] e − i π z / a ) {\displaystyle {\begin{aligned}\Psi _{i}&=Ce^{i\kappa z}\left(e^{i\pi z/a}+\left[-{\frac {\hbar ^{2}\pi \kappa }{ma|V|}}\pm {\sqrt {\left({\frac {\hbar ^{2}\pi \kappa }{ma|V|}}\right)^{2}+1}}\right]e^{-i\pi z/a}\right)\end{aligned}}} で与えられる。Cは規格化定数である。z = 0近くの表面では、バルクの解は指数関数的に減衰する解に合わせる必要があり、このことはポテンシャル定数V0と両立できる。 Ψ 0 = D exp [ − 2 m ℏ 2 ( V 0 − E ) z ] {\displaystyle {\begin{aligned}\Psi _{0}&=D\exp \left[-{\sqrt {{\frac {2m}{\hbar ^{2}}}(V_{0}-E)}}z\right]\end{aligned}}} 許容バンド内にある全てのとりうるエネルギー固有値に対して整合条件が満たされることを示すことができる。金属の場合と同様に、この種の解は結晶内に広がる定常波のブロッホ波を表し、表面で真空に向かってあふれる。波動関数の定性的なプロットを図2に示されている。 κの虚数の値を考慮するとき、すなわちz ≤ 0でκ = - i·qのとき、 i sin ( 2 δ ) = − i ℏ 2 π q m a V {\displaystyle {\begin{aligned}i\sin(2\delta )&=-i{\frac {\hbar ^{2}\pi q}{maV}}\end{aligned}}} と定義できる、結晶に入り振幅が減衰する解を得る。 Ψ i ( z ≤ 0 ) = F e q z [ exp [ i ( π a z ± δ ) ] ± exp [ − i ( π a z ± δ ) ] ] e ∓ i δ {\displaystyle {\begin{aligned}\Psi _{i}(z\leq 0)&=Fe^{qz}\left[\exp \left[i\left({\frac {\pi }{a}}z\pm \delta \right)\right]\pm \exp \left[-i\left({\frac {\pi }{a}}z\pm \delta \right)\right]\right]e^{\mp i\delta }\end{aligned}}} エネルギー固有値は E = ℏ 2 2 m [ ( π a ) 2 − q 2 ] ± V 1 − ( ℏ 2 π q m a V ) 2 {\displaystyle {\begin{aligned}E&={\frac {\hbar ^{2}}{2m}}\left[\left({\frac {\pi }{a}}\right)^{2}-q^{2}\right]\pm V{\sqrt {1-\left({\frac {\hbar ^{2}\pi q}{maV}}\right)^{2}}}\end{aligned}}} と与えられる。必要に応じEは大きな負のzに対して実数である。さらに 0 ≤ q ≤ q m a x = m a V ℏ 2 π {\displaystyle 0\leq q\leq q_{max}={\frac {maV}{\hbar ^{2}\pi }}} の範囲では、表面準位の全てのエネルギーは禁制帯に入る。バルクの解を指数関数的に減衰する真空解に整合させることにより、再び完全解が見つかる。結果として結晶と真空の両方で減衰する表面に局在した状態が生じる。定性的なプロットは図3に示されている。
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