医療水準に関わる問題
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/14 05:42 UTC 版)
他科に比べ、客観的検査所見での診断がつきにくいことや、死亡などの医療事故(自殺以外)及び医療訴訟が少ないことで、誤診に対する意識が低いという声もある。誤診の結果、医療機関を何度も変えた経験がある神奈川県の男性患者は「迷惑するのは何よりも患者です。精神疾患の確実で客観的な診断法の早期確立を強く求めます」と訴え、茨城県の女性患者は、診断基準にない病名もどきを押しつけられ、親子関係まで悪化した経験をし「安易で画一的な診断はこりごり」と吐露している。このように患者の思いをくみ取らず、診察を一方的に進める精神科医も一定数存在する。 一方で、近年公開されている治療成績と医師配置水準の関連を調べた研究では、医師配置が手厚い病棟ほど治療アウトカムが良好であることが示されており、他科同様にマンパワーが低い場所ほど医療水準が下がる傾向がある。これにはイギリスやフランスと比べて、日本では病床辺りの精神科医数が非常に少ないという背景があり、日本の精神科医療水準を高めるには、医療資源の最適化が必要であると指摘されている。 日本は、かつて医学部の医局が独自のやり方を教える方法だったが、現在は指導医制度が存在している。 防衛医科大学校精神科学講座教授の野村総一郎は、適切な薬物療法の指針として、 標準治療を知っている。 副作用とその対策を熟知。 向精神薬の種類を減らす(単剤化率)を上げる努力をする。 複数の薬を使う際,患者に納得できる説明(インフォームド・コンセント)ができる。 薬の少量投与をしない。 薬の飲み心地をいつも聞く。 の6条件を挙げている。 また診療報酬の7割を占めるのは、通院精神療法であるが、初診は500点(1点10円)、再診では30分以上の診察で400点、5分以上30分未満は330点であり、30分以上時間をかけても、レセプトはわずか700円しか違わない。この事から、病院経営を考えると、短時間で大量に診療を行い、大勢の患者を診察し、患者の回転率を上げることで、利益を得る行動につながりやすい。獨協医科大学越谷病院こころの診療科教授の井原裕は「7割の診療報酬収入を精神療法から得ているのだから、精神科医は技術料に見合うだけの意味のある面接をするべきではないのか」と語る。
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