医療サービスにおける準市場
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2017/03/15 05:04 UTC 版)
「準市場」の記事における「医療サービスにおける準市場」の解説
日本は国民皆保険制度が達成され、医療サービスを受けるとき受診する医療機関を誰もが自由に選ぶことができる。医療費は診療報酬で細かく定義されており保険機関の支払額と患者の窓口負担額に差がないように工夫され平等性が確保されている。一方、医療機関は医師や看護婦などの医療従事者を市場から雇用し、医療施設建造、医療機器・医薬品・検体検査などを市場から調達することができる。このように医療サービスでは公的要素と市場競争が組み合わさっているので、日本の医療サービスは準市場メカニズムの元で提供されていると考えられている。 サービスする側が受け取る報酬単位が一定であるので、売り上げ確保のために需要を喚起したり、サービスに掛かる経費を節減することが医業経営の基礎となりうる(利己的、knave)。医療従事者にとって医療機関とは自由契約であるから、インセンティブに拘らず利他的 (knight) であり続けることは難しく、条件の良い(診療科や地域)ほうに移ることになる。 医療サービスを受ける側は医療内容が高度な場合には質を評価できないことも多いので、医療サービスが出来高で提供される場合には医療費が増大しても制御できないことがある。保険者もレセプト内容を審査している一方、経済成長の程度、年齢構成変化による疾病増減(疾病構造変化)、診断治療の進歩に伴い医療費が増減する。しかし医療費が増加したからといって医療保険負担を増加させるのは難しい。 医療サービスを受ける側には通常医学知識が乏しく医療内容評価のための情報が非対称(医師-患者間)である。患者は医療機関や医者を選ぶ基準がはっきりしないので、医療サービスを受けるとき市場原理(市場メカニズム)が働きにくい。 医療サービスは経験財であり、かつ医療知識が非対称であるため、病状や医療内容について説明が充分でないときや、サービス内容や結果に疑問を持ったときには不満が増大することがある。たとえば knight を期待して受診するが knave だったのではないかなど不安になるのである。一般商品の場合は不満足であれば購入されないので市場メカニズムが機能するが医療サービスでは市場メカニズムは機能しにくい。保険者は医療費の収集者であり支払者でもあるため、本来ならば、市場メカニズムに任せるだけではなく queen として医療サービスの質を評価し、情報を提供できる立場にもある。 医療に市場原理を導入した場合に競争勝者が医療サービスを独占する可能性を秘めている。またサービス提供者が効率の良い対象を集めるクリームスキミングが始まる。クリームを掬い取ったあとの、費用対効果の低い領域のサービス等は縮小し、偏在化する(市場の混乱、市場の失敗)。準市場メカニズムは経済成長があり市場規模が維持・拡大するときに機能する。医療費が枯渇したとして過度に診療報酬支払が抑制される場合には、準市場メカニズムはうまく働かない。 「官民二本立て構造」は公的給付と公的給付を超えた分の自己負担が組み合わさったもの。混合診療の一種。
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