利得関数
利得関数
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/10 17:01 UTC 版)
ゲームの重要な構成要素である利得関数(英: payoff function)は戦略集合の直積を定義域とする実数値関数 f i : × k ∈ N S k → R {\displaystyle f_{i}\colon \times _{k\in N}S_{k}\to \mathbb {R} } として定義される。一般に利得関数はプレイヤーごとに異なるため、 n 人ゲームでは n 個の利得関数の組 { f i } i ∈ N {\displaystyle \{f_{i}\}_{i\in N}} を定義する必要がある。利得関数の値である利得(英: payoffs)とは各プレイヤーが実行した戦略によって決定されたゲームの結果に対する評価値であり、したがって、利得関数は効用関数、評価関数、損失関数などと呼ぶこともある。ただし、ゲーム理論における利得関数は、従来の価格理論における効用関数とは異なり、定義域に自分の選択した戦略だけでなく他のプレイヤーが選択した戦略が含まれる。これは意思決定の相互依存的状況を重視するゲーム理論の本質的な側面を反映している。 社会科学では、利得とは通常、企業の利潤(英: profit)や個人の効用(英: utility)に該当する。他方、生物学の文脈では、利得とは個体の適応度(英: fitness)に該当し、生存する子孫の個体数の期待値を意味する。 ゲームには偶然の要素がしばしば加わり、また相手の行動の予測が困難な場合も多いため、リスクや不確実性の下での意思決定の基準たり得る利得関数を考える必要がある。このような要請に応える理論的枠組みとして、フォン・ノイマンとモルゲンシュテルンによる期待効用理論があり、ゲーム理論においても多く応用されている。彼らによって考案された期待利得関数(英: expected utility function)は混合拡大(英: mixed extension)された戦略集合の直積集合 Q := × k ∈ N Q k {\displaystyle Q:=\times _{k\in N}Q_{k}} 上の実数値関数であり、プレイヤーiの期待利得関数 Fi は F i ( q 1 , . . . , q n ) := ∏ j ∈ N ∑ s j ∈ S j { ∏ k ∈ N q k ( s k ) } f i ( s 1 , . . . , s n ) {\displaystyle F_{i}(q_{1},...,q_{n}):=\prod _{j\in N}\sum _{s_{j}\in S_{j}}\left\{\prod _{k\in N}q_{k}(s_{k})\right\}f_{i}(s_{1},...,s_{n})} と定義される。 なお、戦略形ゲームにおいては各プレイヤーが選択した戦略の組がゲームの帰結を表すのに対して、展開形ゲームにおいてはゲームの木(英: game tree)を構成する頂点(英: terminal nodes)がゲームの帰結に相当する。そのため、展開形ゲームでは頂点の集合を定義域とする実数値関数として利得関数が定義される。 非協力ゲームにおいては、各プレイヤーがすべてのプレイヤーの利得関数を知っているかどうかは分析において大きな問題であり、あらかじめ知っている場合や経験によって次第に知る場合、何らかの推定値として知っている場合など、さまざまな場合が仮定される。
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