分子通信
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/05/16 05:19 UTC 版)
分子通信(英語版)は、分子による情報の伝達と受容と定義される。分子通信の技術は、分子伝播のタイプによって、歩道ベース・フローベース・拡散ベースに分類することができる。 歩道ベース(walkway-based)の分子通信では、分子モーターなどの搬送物質を使用して、あらかじめ決められた経路を通って分子が伝播する。このタイプの分子通信には、走化性のある大腸菌を使用することもできる。 フローベース(flow-based)の分子通信では、流れと乱流が誘導され予測可能である流体媒体中の拡散によって分子が伝搬する。人体内部の血流を介したホルモン通信は、この種の伝播の一例である。 フローベースの伝播は、ランダム性を持っていたとしても、平均的にはに特定の経路に沿った動きをする搬送物質を使用することによっても実現することができる。フェロモンによる長距離の分子通信は、この事例の良い例である。 拡散ベース(diffusion-based)の分子通信では、分子は流体媒体中の自発的拡散を介して伝搬する。この場合、分子は、拡散の法則のみに従い、流体媒体中に存在する予測不可能な乱流の影響を受けることもある。フェロモン通信は、フェロモンが空気や水などの流体媒体に放出される場合は、拡散ベースの分子通信となる。この種の輸送の他の例には、細胞間のカルシウムシグナリング、細菌間のクオラムセンシングがある。 理想的な(自由な)拡散の巨視的な理論に基づいて、ユニキャスト分子通信チャネルのインパルス応答は、理想的な拡散ベースの分子通信チャネルのインパルス応答が時間的な広がりを持つと論文に報告されている。このような時間的な広がりは、システムの性能に深刻な影響を与える。受信ナノマシーンにおいて符号間干渉(ISI)を生成する際に重要である。濃度符号化された分子信号を検出するために、サンプリングベース検出(SD)とエネルギーベース検出(ED)の2つの検出方法が提案されている。SDアプローチは、シンボル持続時間中の適切な時点で採取された1つのサンプルのみの濃度振幅に基づき、EDアプローチは、シンボル期間全体にわたって受信された分子の総累積数に基づく。ISIの影響を低減するために、制御されたパルス幅に基づく分子通信方式が分析されている。提示された研究では、理想的な拡散に基づいて多値振幅変調を実現することが可能であることが示されている。パルスベースおよび正弦波ベースのバイナリの濃度エンコード分子通信システムの包括的な研究も行われている。
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