分子軌道論による発色機構
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/14 14:31 UTC 版)
発色団説は染料化学に対して多大な影響を与えたが、物理学理論に基づいて光学的物性を説明するものではなく、また染料化学が発展するにつれ食い違う例も多く見られるようになった。今日では有機色素の呈色の多くは、共役π電子系が置換効果によりその吸収スペクトルを移動させたり、吸収強度を増大させることで物質の可視領域の吸収が増大して呈色すると考えられている。一般に長大な共役π電子系はより長波長側に吸収帯を持つ。次に縮合芳香環の環の数と極大吸収波長の例を示す[要出典]。 ベンゼン(無色) - 255nm ナフタレン(無色) - 286nm アントラセン(淡青色) - 375nm ナフタセン(橙色) - 477nm(可視領域に極大吸収) ペンタセン(濃紺) - 575nm(可視領域に極大吸収) 上のグラフの吸収度は量子収率を加味して模式図としてスケーリングして示している。可視領域の上部には透過光の色を示し、可視領域以外の部分は灰色で示している。ベンゼンおよびナフタレンは可視領域に吸収を持たないために無色である。アントラセンは可視領域に吸収を持たないが、可視領域に蛍光を持つ為に淡青色に呈色している。ナフタセンは紫〜黄色にかけて吸収を持つ為に補色である橙色に呈色する。ペンタセンは可視領域全般に強い吸収を持つものの、青色領域に吸収の極小値を持つ為に濃紺色に呈色する。 また、前述のように、多くの置換基が置換基効果により吸収スペクトルに作用する。したがって発色団や助色団の構成によっては比較的短い共役π電子系であっても強く呈色する。
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