分子ガストロノミーの前身
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/28 06:14 UTC 版)
「分子ガストロノミー」の記事における「分子ガストロノミーの前身」の解説
紀元前2世紀、ロンドンに保管されているパピルスの著者は天秤を使って腐った肉が新鮮な肉より軽いのではないか試そうとしていた。それ以来、多くの科学者が食と調理に関心を持ってきた。とりわけ、肉のストック、動物の組織を水中で熱加工した結果できる水溶液の調理は大きな関心の対象だった。紀元前4世紀に『アピシウス』(André編, 1987)で初めて言及され、ストックの用意は多くの古典(La Varenne, 1651; Menon, 1756; Carême & Plumerey, 1981) やフランス料理本にそのレシピが記載される。化学者達は18世紀から、肉のストックあるいはより広く調理一般に関心を持ってきた(Lémery, 1705; Geoffrey le Cadet, 1733; Cadet de Vaux, 1818; Darcet, 1830)。なかでもおそらく、アントワーヌ・ラヴォアジエがもっとも有名だろう。1783年、彼はその品質評価として密度を測り、ストックの調理過程を研究した(Lavoisier, 1783)。実験結果の報告に、ラヴォアジエはこう書いている。「もっとも身近な対象、単純なものを検討する時には、いつでも我々の発想がいかに曖昧で頼りにならないかに驚かされ、実験や事実を持ってそれを修正するのがいかにも大切と結論できる(ティスの英訳より)」。ストックだけを扱っていた訳ではないが、無論、ユストゥス・フォン・リービッヒを料理科学の歴史の中で忘れることはできない(von Liebig, 1852)。重要人物を今一人挙げたい。後にランフォード伯に叙せられたベンジャミン・トンプソンは調理中の変遷を研究し、よりよい抽出のための特別なコーヒー・ポットの発明を例として、改善のために多くの提案や発明を行った。調理の科学に貢献した科学者はここに挙げるには、人数が多すぎる。- エルヴェ・ティス, 2006 分子ガストロノミーの概念は、もっとも有名なフランス料理シェフのアントナン・カレームが19世紀初頭に、スープを煮出す時は「湯をとてもゆっくりと煮ないと、アルブミンのコラーゲンが硬くなってしまう。水が肉に十分浸透する時間がなければ、オズマゾームのゼラチン質が分離していかない」と言ったのがその前触れだったといえる。現代では「オズマゾーム」という水溶物が味を生じさせるという概念は妥当とは見なされないが、その考察は有意義だった。
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