分子の質量
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/19 02:01 UTC 版)
N 個の原子からなる1個の分子の質量 mf は、その分子を構成する原子の原子質量 ma の総和に等しい。 m f = ∑ i = 1 N m a ( i ) {\displaystyle m_{\text{f}}=\sum _{i=1}^{N}m_{\text{a}}(i)} 例えば、三フッ化リン分子1個の質量は、PF3 分子を構成する4個の原子の質量の和に等しい。 mf(PF3) = ma(P) + 3×ma(F) = 88.0 u 原子質量と同様に、個々の分子の質量の単位には統一原子質量単位 u や ダルトン Da が用いられることが多い。 同じ元素の原子でも、同位体により原子質量は異なる。そのため同じ元素の原子から構成される分子であっても、分子に含まれる同位体が違えば分子の質量は異なる。例えば塩素ガス中には、質量の異なる三種類の分子が含まれている。その質量は、mf(35Cl2) = 69.9 u, mf(35Cl37Cl) = 71.9 u, mf(37Cl2) = 73.9 u である。これら三種の分子は、分子の質量は違うものの、化学的な性質はほとんど同じである。そのため普通はこれらの分子に共通の分子式 Cl2 を与えて、まとめて塩素分子という。塩素分子 Cl2 の分子1個分の質量 mf は、これら三種の分子の数平均で与えられる。 mf(Cl2) = 9/16mf(35Cl2) + 6/16mf(35Cl37Cl) + 1/16mf(37Cl2) = 70.9 u = 70.9 Da ただし、9/16 などの係数は、塩素原子の同位体存在比から見積もった、各分子のモル分率である。 塩素分子 Cl2 のように簡単な分子であれば、上のような計算で分子の平均質量 mf を求めることができる。しかし分子が少し複雑になると、計算の手間が飛躍的に増大する。例えば水分子には、安定同位体のみから構成されるものに限っても、質量の異なる分子が9種類ある。そこで一般には和をとる順序を変えて、先に原子の平均質量を求めてから和をとって分子の平均質量を求める。 m ¯ f = ∑ i = 1 N m ¯ a ( i ) = ∑ i = 1 N A r ( i ) u {\displaystyle {\overline {m}}_{\text{f}}=\sum _{i=1}^{N}{\overline {m}}_{\text{a}}(i)=\sum _{i=1}^{N}A_{\text{r}}(i)\,\mathrm {u} } すなわち、N 個の原子からなる1個の分子の平均質量 mf は、その分子を構成する原子の原子量 Ar の総和に 単位 u をかけたものに等しい。例えば 分子式が CHCl3 である分子の平均質量 mf(CHCl3) は次式で与えられる。 mf(CHCl3) = 1×ma(C) + 1×ma(H) + 3×ma(Cl) = 119.4 u = 119.4 Da
※この「分子の質量」の解説は、「モル質量」の解説の一部です。
「分子の質量」を含む「モル質量」の記事については、「モル質量」の概要を参照ください。
- 分子の質量のページへのリンク