出版権設定契約(出版権)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/05 04:14 UTC 版)
出版権設定契約は特定の者に対し出版権を設定するもので、出版権の設定を受けた出版権者は設定行為に従って著作物を複製して頒布することができる。出版行為には紙媒体やDVD、CD-ROMなどへの複製のほか、インターネットによる公衆送信行為や電子出版なども含まれる。出版権は排他的・独占的な権利であり、出版権を侵害する者に対しては差止請求や損害賠償請求が認められる。 日本では出版権は複製権の一形態として著作権法第三章(出版権)に規定される。著作物を文書または図画として出版する行為を目的とする。 (80条)出版権者は、設定行為で定めるところにより、その出版権の目的である著作物について、次に掲げる権利の全部又は一部を専有する。(1項)頒布の目的をもつて、原作のまま印刷その他の機械的又は化学的方法により文書又は図画として複製する権利(原作のまま前条第一項に規定する方式により記録媒体に記録された電磁的記録として複製する権利を含む) よって出版権者は、著作権者(複製権者)との利用許諾契約の条件下で、著作物の出版行為に関し排他的権利を取得することとなる。出版権者は単なる利用許諾者であるに止まらず、法律上、著作物の公表や権利侵害訴訟の原告資格が付与され(112条)、利用許諾の範囲内では著作権者(複製権者)の複製権・出版権の行使にも影響があるなど、強力な権利を持つ。出版権は次の通り利用許諾の範囲内で存続するが、無期限とした契約の有効性については学説上も争いがあり、有限期間を明示して契約するのが通例である。 (83条)出版権の存続期間は、設定行為で定めるところによる。(2項)出版権は、その存続期間につき設定行為に定めがないときは、その設定後最初の出版行為等があつた日から三年を経過した日において消滅する。 複製権などと同様に、出版権の目的物も法第三節第五款の著作権の制限の対象となる(86条)。また出版権の再譲渡などは原権利者の承諾により可能であり(87条)、著作権と同様の登録対抗要件まで規定がある(88条)。出版権侵害も複製権侵害の場合と同じく、損害賠償請求訴訟や侵害等罪の刑事罰(非親告罪化を含む)の対象となる(第7章、第8章)。2011年に自炊代行業者を相手どった提訴があり、2012年1月20日、衆議院第2議員会館で出版社が公明党衆院議員池坊保子文部科学部会長や自民党議員らに出版社が「著作隣接権を持てる」よう要望し、これは平成26年改正において電子書籍の出版権(いわゆる電子出版権)として実現された(次掲)。 80条2項 原作のまま前条第一項に規定する方式により記録媒体に記録された当該著作物の複製物を用いて公衆送信を行う権利
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