処理水海洋放出
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/07 08:52 UTC 版)
「福島第一原子力発電所事故」の記事における「処理水海洋放出」の解説
2021年4月13日、日本政府は福島第一原発から出た処理水の海洋放出を正式に決定した。敷地内に貯められているALPS処理水は放射性物質を含んでいる。処理水の総量は125万トンに達し、タンクの数も1,000基を超え、2022年中に同原発の空き地がタンクで満杯になる⾒通しである。関係閣僚会議で決めた基本方針では、タンク増設の余地は限定的であるとし、海洋放出の必要性を強調している。処理済み汚染水はアルプスで再び処理し、海水で薄める。放射性物質の濃度を法令基準の約40分の1(1,500ベクレル/リットル)まで十分薄めた処理水にし、処理水海洋放出を行う。浄化装置による汚染水の処理では、大半の放射性物質は除去されるが、トリチウムは水素と性質が類似しているため、水分子からトリチウムだけを分離、除去することは容易ではない。現在タンクに貯蔵されている125万トン超の処理水中に含まれるトリチウムの総量はわずか16グラム程度であり、このような微量を取り除く技術は、日本だけではなく、世界でも実用段階に至っていない。だが、トリチウムは放射性同位体が減少して半分になる半減期は12.33年である。そのため、原子力発電を実施している各国はいずれも、トリチウムを基準値以下に薄めたうえで、海洋など自然界に放出している。日本政府方針は一定の科学合理性を有しているため、国際原⼦⼒機関(IAEA)は「科学的根拠に基づく」と評価した。だが、福島原子力発電所事故以来、風評被害に苦しんできた漁業関係者や福島の住民は政府の方針に不安感を抱き、反対している。政府は「風評被害」が起きないよう万全の対策をとるとしている。また、中国や韓国などの近隣諸国も海洋環境への悪影響を理由に反対している。監視機関による情報公開によって、福島第一原発近海の状況が日本国内および世界に正しく伝われば、風評被害の防止となる。
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