内部被曝の特徴
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/01 21:32 UTC 版)
内部被曝をした場合、すなわち一度体内に放射性物質が取り込まれた場合、その取り込まれた放射性物質を除くには、物理的減少(放射性崩壊)と共に生体機能の代謝による排出を待つよりほかない。その場合、物質により放射性物質としての半減期に生物学的な半減期が加わるために、内部被爆の線量の計算には多くの困難がある。 詳細は「半減期#生物学的半減期と実効半減期」を参照 体内に取り込まれた放射性物質がどのように振舞うか(体内のどの部位に沈着するか)は、その元素の化学的性質によって異なる。たとえばヨウ素131は吸気から、皮膚から、食事や飲水からなど多くの経路で内部被爆の推定には難しさがある。 ヨウ素は選択的に甲状腺に取り込まれ沈着する。甲状腺には多くのチログロブリンの蓄積があり、それがヨウ素と結合している量も変動が大きい。たとえば海産物を多く摂取する日本人の場合はヨウ素の飽和量が高いといわれるが、大陸の住人はヨウ素の飽和度が低いといわえる。このように、甲状腺に蓄積するヨウ素131の量については、被爆にいたる経路が複数であること、また甲状腺のヨウ素の飽和度などにも個人差があり、また内部被爆の影響が長時間にわたると考えられる。このため、多くの仮定と推定により50年間にわたる生体の内部被爆量を預託等価線量として推定するが、その算出には多くの議論がある。 したがって内部被爆防護の立場では、最初に飛散するヨウ素131が住人に到達する前のなるべく早い段階でヨウ素剤を投与し、甲状腺のヨウ素飽和度をあげて、ヨウ素131の蓄積を減らすことが最も重要である。このために原子量発電所の近傍や作業にあたる自治体、警察、軍隊組織などにヨウ素剤の蓄積されているが、わが国では住民にあらかじめ配布されていないので、原子量発電所の事故などの混乱時に短時間にヨウ素剤を配布することが困難であるとの指摘がある。アルカリ土類金属であるストロンチウムは骨中の同じくアルカリ土類金属であるカルシウムと置き換わって体内に蓄積することが知られている。一方で、カリウムやセシウムは水に溶け込み全身の細胞内に広がる。このように、放射性物質の種類によって体内に摂取された後に存在する場所が変わる。 体内に入ってしまった放射線物質を検査する一般的な方法として、ホールボディカウンターによってガンマ線を測定・分析する方法がある。ヨウ素131は半減期が短いため早期に測定しないと正確な値が測定できない。なお、この装置はガンマ線が人体を透過することを利用したものであるため、ガンマ線を出さない核種の測定は不可能である。
※この「内部被曝の特徴」の解説は、「被曝」の解説の一部です。
「内部被曝の特徴」を含む「被曝」の記事については、「被曝」の概要を参照ください。
- 内部被曝の特徴のページへのリンク