共同捜査判事
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/06 01:27 UTC 版)
共同捜査判事 (Co-Investigating Judges) は、共同検察官からの司法捜査開始の申立て (Introductory Submission) を受けて、司法捜査を行う権限を有する。検察官ではなく捜査判事が捜査の主体になる点は、他の国際法廷と異なるところであり、大陸法(フランス法)の影響を受けたカンボジア刑事手続法の特徴である。 共同捜査判事は、被疑者の有利にも不利にも偏らず、公平な立場から捜査を行う義務があり、被疑者の取調べ、被害者・証人の事情聴取、証拠物の押収、専門家の意見の聴取、現場検証、召喚状・逮捕状・勾留命令の発付、証人保護措置、各種機関(国家、国連、国際機関、NGO等)に対する情報提供・支援依頼など、真実発見のための様々な活動を行う権限を有する。また、当事者(共同検察官、被疑者、民事当事者)は共同捜査判事に対しこれらの捜査手段をとるよう申し立てることができる。 捜査を終えると、共同捜査判事は全当事者及びその代理人にその旨を通知する(当事者は15日以内に捜査続行の申立てをすることができ、これが却下されたときは公判前裁判部に抗告をすることができる)。捜査終了の決定が確定すると、共同捜査判事は事件記録を共同検察官に送付し、共同検察官が最終送致書を作成して、共同捜査判事に対し起訴又は不起訴の意見を提出する。ただし、共同捜査判事は共同検察官の意見には拘束されず、捜査終結宣言 (Closing Order) を発し、被疑者を起訴して公判廷に送るか、又は不起訴(却下)とするかを判断する。不起訴となるのは、(1)共同検察官が送致した犯罪事実が特別法廷の管轄に属するものではない場合、(2)犯罪の実行者が特定されていない場合、(3)被疑者に対する嫌疑を裏付ける十分な証拠がない場合である。起訴の判断に対しては共同検察官からのみ抗告を行うことができ、不起訴命令に対しては共同検察官及び民事当事者から抗告することができる。捜査終結宣言が確定した後は、共同捜査判事は役割を終えるが、不起訴後に新証拠が現れた場合は、共同検察官の申立てにより司法捜査が再開される場合がある。 共同捜査判事はカンボジア人判事1名と国際判事1人が務め、現在は次の2名である。当初の国際捜査判事はフランスのマルセル・ルモンドであったが、カンボジア人捜査判事との対立が報じられる中、第2事件の捜査終結宣言を出した2010年9月15日当日、個人的事情を理由として辞任を表明し、同年12月1日、ドイツのジークフリート・ブルンクが捜査判事に任命された。しかし、2011年10月9日、ブルンクは第3事件及び第4事件に関するカンボジア政府からの介入が取り沙汰されてきたことに言及し、辞任を表明した。 ユー・ブンレン( カンボジア) ロラン・カスパー=アンセルメ(フランス語版)( スイス、予備)
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