免疫学的多様性
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/31 15:33 UTC 版)
ほぼ全てのタンパク質と多くの多糖類を含む殆どの大きな分子は、抗原として機能する。抗原の内、抗体分子やリンパ球の受容体と相互作用する部分は、抗原決定基と呼ばれる。殆どの抗原には数多くの抗原決定基が含まれており、抗体の産生、特異的なT細胞反応、あるいはその両方を刺激する事が出来る。全リンパ球のうち、特定の抗原に結合出来る割合は非常に少なく(0.01%以下)、これは、各抗原に反応する細胞は少数である事を示唆している。 獲得した反応が多数の病原体を「記憶」して排除するためには、免疫系は多くの異なる抗原を区別できなければならず、抗原を認識する受容体は膨大な種類の構成で生産されなければならない。要するに、遭遇する可能性のある異なる病原体毎に(少なくとも)1つの受容体が必要なのである。抗原の刺激がなくても、人間は1兆個以上の異なる抗体分子を作り出す能力を持つ。これらの受容体を作り出す遺伝情報を格納するためには、何百万もの遺伝子が必要であるが、ヒトの全ゲノムに含まれる遺伝子は25,000に満たない。 この様な無数の受容体は、クローン選択と呼ばれるプロセスを経て生み出される。クローン選択理論によると、動物は生まれたときに、小さな遺伝子群にコードされた情報から、膨大な種類のリンパ球(それぞれが固有の抗原受容体を持つ)をランダムに生成するという。其々の抗原受容体を生成する為に、これらの遺伝子は、V(D)J遺伝子再構成(組合せ多様性)と呼ばれるプロセスを経ている。この組み換えプロセスにより、体が抗原に出会う前に、膨大な数の受容体と抗体が生成され、免疫系はほぼ無限の抗原に対応する事が出来る。動物の一生を通じて、リンパ球は実際に遭遇した抗原に反応できるものが選択され、その抗原を発現しているあらゆる対象に向けて攻撃する。 自然免疫系と獲得免疫系は、お互いに協力し合って働いている。獲得免疫系の武器であるB細胞やT細胞は、自然免疫系の入力なしには機能しない。T細胞は抗原提示細胞が活性化してくれないと役に立たず、B細胞はT細胞の助けがないと機能しない。一方、自然免疫系は、獲得免疫反応の特殊な作用がなければ、病原体に蹂躙されてしまう可能性が高い。
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