免疫学的監視説
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/07 02:17 UTC 版)
癌と免疫は関連があることは19世紀末から知られており、1891年に外科医であるW.B.コーリーが細菌由来毒素であるコーリートキシン(Coley Toxin)を癌患者に投与して、免疫を賦活させることにより癌を治癒させたことに端を発する。1950年代に入ると「免疫学的監視説」と呼ばれる形でフランク・バーネットらによって提唱され、1960年代には広く受け入れられるようになった。これは生体内では常に悪性腫瘍細胞が産生されており、免疫応答によってこれらが駆除されているというものである。しかし、リンパ球の一種であるT細胞を持たないはずの胸腺欠損ヌードマウスと正常なマウスを比較したところ癌の発生に差が認められないことなどから免疫学的監視説は一時疑問視された。その後の研究で胸腺欠損ヌードマウスにもNK細胞などによる免疫が残っていることが明らかになり、2001年には免疫グロブリンの多様性に関与するRAG遺伝子を欠損したマウスを用いた実験が行われた。その結果として、RAG遺伝子の欠損は癌の発症率を上昇させることが報告されており、癌と免疫の間には関連があることがうかがわれる。
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