供給安定性と電力輸入
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/04 22:41 UTC 版)
原発がベース運用のために柔軟に対応できないにも関わらず、再生可能エネルギーの流動的な電力に対応した発電が必要とされているなら、停電が起こるかもしれないということを批評家たちは懸念している。ドイツ連邦ネットワーク庁(ドイツ語版)は、この懸念をまだ確定していない。冬でも安定した電力を保証するには、原発は「予備電力」として絶対に必要であるわけではない。「異常な寒冬が起こった場合でも、予備用原発を使わなくても、送電ネットワークは制御可能である」と連邦ネットワーク庁長官のマティアス・クルト(ドイツ語版)は述べている。発電設備の詳細な分析が、予備電力容量を算出している。 原発も待機電力を必要とする。2012年1月初め、北ドイツで高い風電力供給が行われているときに、イタリアへの電力輸出で南ドイツが電力不足になるのを避けるために、オーストリアからの予備発電所が作動した。原因は、グンドレミンゲン原子力発電所で1,344MWの出力をもつCブロックが、欠陥のある核燃料を交換しなければならなくなり、停止せざるを得なくなった点にある。この停電を他の発電所が埋め合わせなければならないという状況のなか、それが可能であったのはオーストリアの発電所であった。他のドイツの発電所は、この時点では停止していた。 ドイツエネルギー水道連合会(ドイツ語版)の主張によれば、2011年上半期(つまり8基の原発を停止したあと)には、輸出した電力の利潤は、差引残高で輸入よりも17%も高かった。およそ28テラワットを輸出することができた。その多くはオーストリアとスイスである。それに対して輸入は24テラワットであった。エコロジー研究所(ドイツ語版)によれば、原発停止での不足分は、フランスやオランダの石炭・天然ガス発電、チェコの褐炭発電によって補われたのであり、他国の原発によってではない。もちろん、ドイツとフランスの電力流通も変化し、フランスは年平均で、ドイツよりも上回る輸出量となった。2011年には10.8TWhがフランスからドイツに輸出されたのに対して、ドイツからフランスに輸出されたのは8.4TWhであった。 ドイツの原発が停止した2011年下半期でも、2011年全体でも、純利益はあがっている。欧州送電系統運用者ネットワーク(ドイツ語版)の暫定的な支払いによると、約6TWhの電力が純利益となっている。原発停止によって生じた32TWhの不足分は、差引で前年度よりも12TWh輸出が減少し、2010年と比べて再生可能エネルギーで18TWhの供給量が増大したことによって、完全に相殺された。目立っているのは、電力輸出入の季節ごとの変動である。エネルギーバランスシート研究チームの支払いによると、第3四半期後は1.6TWhも輸出が輸入を上回った。また夏には需要が減少して輸入が上回ったのに対して、第四四半期には需要が高まり、差引約4.5TWhも輸出が上回った。 欧州送電系統運用者ネットワーク(ドイツ語版)のデータを元に作成した以下の表が示しているように、2011年から2012年冬期に8基のドイツ原発が停止したあと、輸出結果にわずかな変化が生じた。フランスへの電力輸出総計は、5TWhから4TWhに減少したが、チェコからの輸入も、5.8TWhから4.7TWhに減少した。
※この「供給安定性と電力輸入」の解説は、「原子力撤廃」の解説の一部です。
「供給安定性と電力輸入」を含む「原子力撤廃」の記事については、「原子力撤廃」の概要を参照ください。
- 供給安定性と電力輸入のページへのリンク