低体温症の機序
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/05 01:36 UTC 版)
恒温動物の体温は、恒常性(ホメオスタシス)により通常は外気温にかかわらず一定範囲内で保たれている。しかし、自律的な体温調節の限界を超えて寒冷環境に曝され続けたり、何らかの原因で体温保持能力が低下したりすると、恒常体温の下限を下回るレベルまで体温が低下し、身体機能にさまざまな支障を生じ多臓器不全にいたる。この状態が低体温症である。 低体温症は必ずしも冬季や登山など極端な寒冷下でのみ起こるとは限らず、水泳用20-24℃のプール、濡れた衣服による気化熱や屋外での泥酔状態といった条件次第では、夏場や日常的な市街地でも発生しうる。軽度であれば自律神経の働きにより自力で回復するが、重度の場合や自律神経の働きが損なわれている場合は、死に至る事もある症状である。これらは、生きている限り常に体内で発生している生化学的な各種反応が、温度変化により、通常通りに起こらない事に起因する。 臨床的には、 細胞機能の低下・酸素消費量の低下 ⟶ {\displaystyle {\ce {->}}} エネルギー産生の低下 ⟶ {\displaystyle {\ce {->}}} 臓器機能低下 血漿成分の血管外漏出 ⟶ {\displaystyle {\ce {->}}} 蛋白成分の低下 尿細管再吸収低下・低比重尿の増加(colddiuretics) ⟶ {\displaystyle {\ce {->}}} 血液濃縮 細胞膜Na/K ATPaseの活性低下 ⟶ {\displaystyle {\ce {->}}} Naの細胞内移行とKの細胞外移行(電解質異常) 組織血液低還流、末梢循環障害による代謝性アシドーシス、乳酸上昇 症状としては、 筋肉代謝系軽度低体温では骨格筋は戦慄(シバリング)する 中等度低体温では戦慄は消失 高度低体温では筋は硬直する 神経系感情鈍磨から昏睡状態へ 呼吸系頻呼吸から徐呼吸・呼吸停止へ 循環系頻脈から徐脈・心停止へといずれも抑制的に働く。18℃で心停止に至る。 心電図 : 洞性除脈、T波逆転、PQ・QR・QTSの延長、心室性不整脈、心房細動(心房粗動)、種々の不整脈、心室細動は30°C以下で起こりやすい
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