人口の水増し
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/11 00:36 UTC 版)
前述の通り、国勢調査の結果に基づく法定人口により市や指定都市への移行などが決定されるため、市制施行を目指す自治体が故意に人口の水増しを行ったことがある。 1970年に行われた国勢調査で北海道羽幌町の人口は2万8000人余であったが、翌1971年になって同町町議の告発がきっかけとなり約5,900人もの人口の水増しが行われていたことが発覚した。同町では前回の1965年の国勢調査で当時の市制施行要件を上回る3万人余の人口を記録し、新庁舎の建設に着手するなど市制施行に向けた動きが活発になっていたが、町の経済を支えていた羽幌炭鉱の経営が悪化したことで人口の流出が進み、調査時には3万人を大幅に割り込んでいた。警察の捜査の結果、町長ら幹部を含む83人が統計法違反や公文書偽造の容疑で送検された。 また、2010年に行われた国勢調査において愛知県知多郡東浦町の人口は、速報値では50,082人であったが、総務省統計局が再調査した後の確定値は49,800人であった。東浦町は市制施行の要件の1つである「人口5万人」の突破を目前に控え市制施行を準備していたが、5万人に足らなかったため、2011年10月、市制施行を断念した。 これに先立つ2010年12月、国勢調査に関わる町の不正を告発する匿名の文書が、総務省統計局に届き、2012年2月、総務省が現地調査を行った結果、居住実態のない国勢調査票が303人分見つかり、この国勢調査で人口の「水増し」が行われた可能性があることが指摘された。 居住実態のない国勢調査票について東浦町側は当初、平成22年国勢調査から調査票に記入漏れがあった場合は、地方公共団体の担当職員が書き加える、という新制度が設けられたことを受けて、町職員が居住実態を確認することを怠ったまま、住民票に基づいて調査票に居住者を書き加えた事務的失態であった、と説明していた。これに基づき、調査監督責任者である幹部職員を含む町職員4名に対し減給・戒告などの処分を行い、町長が「新制度に関する認識不足、勉強不足によるもの」であるとして謝罪した。 一方愛知県警察は、組織ぐるみで人口を水増しする違法行為が行われたと判断し、強制捜査に踏み切った。2013年2月、町長の釈明とは異なり、東浦町が故意且つ組織的に人口を水増しした疑いが強まり、統計法違反の容疑で前副町長を逮捕した。また前副町長の指示に基づき調査票を偽造した容疑で町幹部や町職員らも共犯として任意捜査を受けており、書類送検された。 愛知県警によると、調査票偽造は平成22年国勢調査から設けられた新制度を悪用したものと見られ、東浦町の住民基本台帳や外国人登録の情報を基に、既に町が転出を確認している元町民について、国勢調査当時も東浦町に居住していたように偽装し、町職員が元町民の情報を調査票に記入していたという。
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