予測される崩壊特性
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/02 05:13 UTC 版)
「島の上の」核種は観測されていないため、安定の島にある核の半減期は未知である。多くの物理学者はこれらの核の半減期は比較的短く、数分から数日のオーダーであると考えている。その半減期は100年のオーダーと長く、109年にもなる可能性があることを示す理論計算もある。 N = 184での閉殻により、アルファ崩壊と自発核分裂の部分半減期がより長くなると予測されている。閉殻は298Fl付近でのより高い分裂障壁をもたらし、核分裂を強く妨げ、これによりおそらくは閉殻に影響を受けない核の分裂半減期よりも半減期が30桁も大きくなると考えられる。例えば、ダブルマジック核298Flは1019年オーダーの自発核分裂半減期を持つ可能性がある。これは安定化効果の限界を決めていると考えられている既知の中性子欠如同位体284Fl(N = 170)の半減期2.5msよりもずっと長い。未発見の同位体の中にはさらに短い半減期で核分裂を起こし、安定の島を超える超重核の存在と観測可能性を制限すると予測されるものがある(すなわち Z > 120 および N > 184。これらの核はマイクロ秒以下でアルファ崩壊もしくは自発核分裂を起こす可能性がある)。島の中心部においては、アルファ崩壊と自発核分裂の間に競合があるかもしれないが、正確な比率はモデルに強く依存する。100 ≤ Z ≤ 130の1700個の原子核のアルファ崩壊半減期が実験的・理論的アルファ崩壊Q値を用いて量子トンネルモデルで計算されており、いくつかの重い同位体については観測された半減期と一致が見られている。ベータ崩壊は島の中心と予測される場所付近、特に元素111-115の同位体で他の崩壊モードと競合すると予測されているため、最も半減期の長い同位体も同様にベータ安定線上にあると予測されている。全ての崩壊モードを考慮すると、様々なモデルにより島の中心(すなわち最長寿命の核種)の298Flからより低い原子番号へのシフトが示されている。この中には291Cnと293Cnの100年半減期、296Cnの1000年半減期、294Dsの300年半減期(後者2つはN = 184の閉殻)が含まれる。 これらの半減期は超重元素としては比較的長くなるが、地球上に原始的に存在するには短すぎる。原始アクニチド(232Th, 235U, 238U)と自発および誘導核分裂に対する安定の島の間の中間の核の不安定性は、r過程での核合成におけるそれらの生成を阻害する可能性があるが、宇宙線内で鉛に対して10−12の存在量で起こる可能性がある。 最も重い超重元素の考えられる強い崩壊モードは、Dorin N. Poenaru, R.A. Gherghescu, ワルター・グライナーによりクラスタ崩壊であることが示された。それにもかかわらず、これはZ = 122より大きいものの影響が大きく、島の中心が予測よりも高い原子番号でない限り島の中心近くの同位体の崩壊への影響を小さくすると予測されている。
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