中間財貿易の扱い方
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2016/03/16 06:19 UTC 版)
ハンメルズらは、「中間財貿易」という概念が曖昧であるとして、近年の生産の国際化は垂直特化(vertical specialization)と概念化すべきだと主張している。中間財・投入財は、その使途により定義されるものである。たとえば、(精米された)米は、直接消費されれば最終消費財、菓子などの生産に投入されれば投入である。生産の分断化が進行する以前から、19世紀以降の工業生産には、原材料・部品・機械設備等、輸入された財の投入に本質的に依存していたが、それを適切に理論化する枠組みが欠けていたことが問題であった。 中間財貿易を理論化したとする論文は多いが、ほとんどは所与の費用構造と特定の貿易パターンとを想定するものである。それでは、中間財の使われ方により、商品の国際価格が変わってしまう事態に対応することはできない。 マルクーセンは、『多国籍企業と国際貿易の理論』の第9章で「中間投入財貿易と垂直的多国籍企業」において、投入財の貿易を取り上げているが、貿易される中間財は熟練労働の豊富な国のみで生産され、未熟練労働の豊富な国に輸出され、最終財に組み立てられた後、本国に再輸出されると最初から前提している。一般均衡理論を背景とする部分均衡理論と位置づけと思われるが、「要素市場や要素価格をとおして作用するより複雑な効果」については注意を呼びかけるにとどまっている。 ハンメルズらは「中間財が費用なしに貿易されない最終財に組み立てられるときには」、リカード型、ヘクシャー・オリーン型、独占競争のいずれにおいても、「容易に中間財貿易のモデルに再解釈できる」と注意している。しかし、これは中間財貿易が各国の財の生産費用を変えてしまうこと、そのため世界規模での価値連鎖が追求されることを無視している。すでに1950年代にマッケンジーらが中間財貿易の理論を構成する必要を認識しながら、最終的にそれを果たせなかった困難がどこにあるか、ハンメルズらは認識していない。より最近では、ディアドルフが中間財のある場合に比較優位を定義しようと試みている。ディアドルフは、5つの可能性を挙げ、さらに閉鎖経済時の価格を用いるもう5つの変種を掲げているが、どのひとつも十分なものではない。 フェーンストラのAdvanced International Trade第4章は「中間投入貿易と賃金」と題されている。しかし、ここで議論されているのは、低賃金国からの部品輸入や低賃金国における組み立てにより、米国の非熟練労働者の賃金率が圧迫されることであり、中間財貿易自体は、分析の中心的対象とはなっていない。わずかに提示される「中間投入財の貿易」でなされているのは、中間財投入が輸入された財で補充されるものでしかない。この章の「結論」でフェーンストラは、取り上げられた中間財貿易のモデルが「伝統的なヘクシャー・オリーンの枠組みに類似したところがある」としている。しかし、第2章のヘクシャー・オリーン・モデルおよびヘクシャー・オリーン・ヴァネク・モデルは、実は伝統的なものではなく、各国の生産要素の生産性をデータに適合するようアドホックに指定するトレッフラー・タイプのものである。ツォイテン記念講演ではフェーンストラは、中間財輸入による消費者利益(第2章)と中間財輸出による生産者利益(第3章)を扱っているが、低価格の中間財投入により生産原価が低下する事態は分析されていない
※この「中間財貿易の扱い方」の解説は、「中間財貿易」の解説の一部です。
「中間財貿易の扱い方」を含む「中間財貿易」の記事については、「中間財貿易」の概要を参照ください。
- 中間財貿易の扱い方のページへのリンク