中山間地酪農
平野の周辺部から山間地に至る地域を中山間地と呼びます。その地域は国土面積の約70%を占め、総人口の約15%が居住し、農業生産額の約40%を産出している重要な地域です。また自然環境の保全にも大きな役割を果たしています。日本酪農の約3分の1が、そうした中山間地に位置しています。 また北海道のような広大な牧草地を有した大規模放牧型の牧場や、まわりを住宅地に囲まれている都市近郊型の酪農や、秋田県や山形県、四国の高知県などの一部では山地酪農といって、山を放牧に利用した酪農も行われています。 日本のなつかしい田舎の風景の中の中山間地にある牧場。あまり知られていませんが、そこで、酪農は農村のためにさまざまな役割を担っています。たとえば使われなくなった農地を、牧草地として利用する。これは農村の景観を維持するのはもちろん、たとえばだんだん畑を利用することによって、水質の悪化を防ぐことにもつながっています。また台風などの災害対策にも役立つことになります。意外なことかもしれませんが、日本の農村の風景は、酪農家とほかの農家との協力によって、維持されているのです。こうした事実に政府も関心を示し、農業政策の一環としての棚田保護に来年度からようやく直接補助がはじまることになりました。 もっとも、ヨーロッパでは早くから中山間地の農家に対する手厚い保護が進められてきました。中山間地域の農家が景観や環境に果たす役割を十分理解しているからでしょう。たとえば西ドイツのある中山間地の酪農家の場合、年収の約4割までが政府からの直接補てん金というケースもあるほどです。この数字からみても、日本とヨーロッパでは、景観維持や環境保全に対して、まだまだ意識の違いがあるようですね。 |
中山間地酪農による景観維持 |
<ミルククラブ情報誌'98 WINTER vol.26より> |
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