不審船からの反撃と銃撃戦
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/04 14:04 UTC 版)
「九州南西海域工作船事件」の記事における「不審船からの反撃と銃撃戦」の解説
22時00分、低速で逃走する不審船に対し、「いなさ」が距離を取って監視し、右舷側から「あまみ」、左舷側から「きりしま」がサーチライトを照射しながら不審船を挟撃、強行接舷し、64式7.62mm小銃で武装した海上保安官の臨検要員の突入を試みた。その際、不審船に乗っていた複数の乗組員がPK系軽機関銃およびAKS-74による銃撃を巡視船に対して開始した。 この銃撃を受けた巡視船は、サーチライトを消灯し、全速力で退避しながら20mm機関砲による正当防衛射撃を行なった。「あまみ」の海上保安官は、あらかじめ不測の事態に備えて装備していた64式7.62mm小銃による正当防衛射撃を直ちに行った。不審船乗組員はたZPU-2機関砲や小火器を用いて執拗な攻撃を繰り返した上、RPG-7から2発を発射した。しかし、波で激しく船体が揺れていた上に、視界不良もあって巡視船に命中することはなかった。 このRPG発射の様子は、上空を飛んでいた海上保安庁機の採証装置(赤外線カメラ)に映像として記録された。「あまみ」から撮影していたビデオ映像にも、画面は真っ暗だったが、飛翔体が「あまみ」の上を通過した音が記録されており、これはRPGの弾体が通過した音と推定されている。 防弾の施されていない「あまみ」は、銃撃戦による被害が大きく、船橋を100発以上の銃弾に貫通され、3基ある主機のうち1基が破損、乗組員3名が銃撃戦で負傷した。また、射撃を受けた際に「後進いっぱい」を命じたため、船体後部のスリップウェイ内の搭載艇が波浪で押しつぶされるなどの被害も発生している。一方、日向灘不審船事件を契機に誕生した「きりしま」の損害は軽微であったが、「いなさ」については防弾化されていなかった主船体部を銃弾が貫通、右舷機冷却系統に被弾し機関停止した。船橋部分が防弾化されていた不審船の乗組員は、視界不良の中で巡視船が放つ曳光弾の光を頼りに、なおも自動小銃で攻撃した。 銃撃戦が長引いた理由としては、海上保安庁は警察機関の一つであり、該船(取締り対象の船)の撃沈や乗員の殺傷による無力化ではなく拿捕・検挙を目的とするため、20ミリ機関砲が持つ本来の3,000発/分の発射速度を500発/分に制限しており、弾薬も、警告射撃の際に被疑者に光で警告する効果を期待して曳光弾と普通弾を保有しているが、炸薬を充填した榴弾を保有していないことがあげられた。
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