上記主張に対する返答・反論
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/03 01:13 UTC 版)
「ボイコット、投資撤収、制裁」の記事における「上記主張に対する返答・反論」の解説
なお、上記の主張に対しては、以下の通り複数の返答や反論が存在している。 ジェイ・マイケルソン(英語版)はジューイッシュ・デイリー・フォワードの社説で、上記のフォックスマンの立場に対する批判を述べている。社説では、BDS運動における数人の指導者たちは現にユダヤ人であり、ADLは「検閲行為に支持的だとみなされるようなあらゆる姿勢をとることで[…]その信頼性をますます失い、そして『反セム主義』という用語それ自体の持つ意味を陳腐化させている」と指摘した。 ジュディス・バトラーは、BDS運動が求めているものは、国際的な人権の原則と合致するものであり、またそうした価値観に由来するものであると主張している。またバトラーは、BDS運動と反セム主義を同等視することは、そうした価値観を反セム主義だと主張することと同じことであると結論した。 とりわけBDS運動がダブル・スタンダードであるとする議論に関しては、以下のような返答・反論が存在する。数人の論者が、イスラエルはアメリカの同盟国の中でも最も多くの援助を受けている国家のひとつで、それはアメリカとイスラエルの間に特有の政治的・歴史的な関係性によるものであり、よってアメリカ人はイスラエルにおける人権の状況に特別な責任を負っていると議論している。イスラエルの場合のみ異なる方法で処遇している別の理由としては、ボイコットの呼びかけというものが、イスラエルによる人権侵害の犠牲者を自認する人々が属する、おびただしい数の市民社会が結束して行った努力の結果だからだとしている。後者の効果に関する一つの例は、著名な科学者であるスティーヴン・ホーキングの発言にも見て取れる。彼がイスラエル大統領会議(英語版)への参加を辞退する決断をしたことは、「(ホーキングが)ボイコットをリスペクトすべきだ」と一致して主張していたパレスチナ人学者らからの呼び掛けに動機づけられたものであったと説明している。 別の反論としては、最終的には全ての国家が人権の原則に責任を負わなければならないとする議論がある。しかしながらどの国が先にそうするべきかという問いについては、答えが出ていない。 人格攻撃論法(人身攻撃)の観点からは、BDS運動支持者による個人に対する攻撃は、論理的に見当違いをしているという主張がある。その理由としては、BDS運動支持者らは、対象となる個人による反BDS的な議論や活動というより、むしろその個人の性格や行動、その動機に着目してしまっているという点が挙げられている。 ジュディス・バトラーはまた、BDS運動を反セム主義であるとする主張は必然的に、「彼ら(ユダヤ人)は全員が同じ政治的参加を行っている」との推測による、誤った「全ユダヤ人の一般化」に起因していると議論し、同時にそうした主張は、ユダヤ人の間でも広範にみられる、イスラエルに対して「きわめて批判的」な見方の存在を無視しているとした。同様の推論がウマル・アル=バルグースィーによっても行われており、彼はBDS運動を全ユダヤ人に対する攻撃だとして批判する人々は、全ユダヤ人をイスラエルと同等視してしまっていると主張している。 BDS運動と、反セム主義的な動機によって行われる対ユダヤ人ボイコットの間にある類似性については、ヘブライ大学でホロコーストやジェノサイドに関する研究が専門のダニエル・ブラットマン教授によって検討がなされている。リベラルなシオニストであり、BDS運動に反対する立場のブラットマンによれば「反セム主義的な動機によって行われる対ユダヤ人ボイコットと、今日における対イスラエル・ボイコットの間には、なんら共通点は存在しない。[…]反セム主義的なボイコット運動とは、国家に属さないとみなされ、さらには国家の敵とさえいわれた者たち(すなわちユダヤ人)に対し、敵対的な行動を起こさなかった体制に対して向けられていたものである。イスラエル人がこの2つのボイコット運動を同一視する現象というのは、右派の間で見られるものであり、彼らは彼らで、アラブ人産品のボイコットを呼びかけている」という。
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