三尖弁閉鎖症
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/06 04:25 UTC 版)
三尖弁閉鎖症(さんせんべんへいさしょう: TA; ICD-10: Q22.4)は、先天的に三尖弁(右心房と右心室の間の弁)が閉鎖している病気。(後天性の疾患は存在しない) 概要 右心房から右心室に血液が流れ込めないため、すべて心房間の穴(心房中隔欠損かそれがない場合でも卵円孔があるのでそこから流れる)に血液が流入して左心室経由で血液が循環する(肺循環はこの時動脈血と静脈血が混じった血液の一部が動脈管か心室中隔欠損経由で肺に流入する)。 先天性心疾患の1~3%を占める比較的稀なチアノーゼ心疾患で、肺動脈の状態と大血管の配置でキース・エドワード(Keith-Edwards)分類でI-III型(各自にa-c)の分類がなされる。 キース・エドワード分類 I型:大血管関係正常Ia:心室中隔欠損なく肺動脈閉鎖 Ib:心室中隔欠損が小さく肺動脈狭窄 Ic:心室中隔欠損が大きく肺動脈狭窄なし II型:D型大血管転位IIa:肺動脈閉鎖 IIb:肺動脈狭窄 IIc:肺動脈狭窄なし III型:L型大血管転位 病態・症状 肺血流が少ないとチアノーゼが強く出る(肺血流減少型)、逆に多すぎると肺や心臓に負担がかかり心不全を起こす(肺血流増加型)。 肺血流減少型 肺血流が動脈管経由で維持されている場合は、出生後動脈管が閉じはじめると肺血流量はその分減少するのでチアノーゼが次第に強くなる。心室中隔欠損で血流が維持されている場合はそこまでいかないものの低酸素発作(スペル発作)を起こすことがある。 肺血流増加型 チアノーゼは目立たないが、呼吸障害、肝臓の腫大、浮腫、体重増加不良などの鬱血性心不全の症状が目立つ。 治療 対処療法的に心房間の連絡が悪い場合は、心房中隔裂開術(BAS)を行う。また、生後動脈管が閉鎖すると特に心室中隔欠損がない場合は肺血流が確保できなくなるので、プロスタグランジンで動脈管をふさがらないようにして、生後1-2週間のうちにBTシャント(Blalock-Taussig shunt)を行う。逆に肺血流が多すぎて心不全症状があるときは、肺動脈絞扼術(バンディング)を行う。。 手術を含め根治的治療法はない(右心室が未発達なので三尖弁を開く手術をしても循環に利用できない)が、適応基準を満たしていればフォンタン手術(Fontan手術)を行い、チアノーゼをなくすことはできる。ただし、根治手術ではないので運動能力は手術前よりはよくなるものの健常者に比べれば低い他、静脈血が鬱滞しやすい状況(慢性鬱血性心不全状態)になり、血栓症を起こしやすくなるので注意が必要である。
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