一酸化窒素:心筋保護の唾液中バイオマーカー
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/01/01 04:27 UTC 版)
「唾液検査」の記事における「一酸化窒素:心筋保護の唾液中バイオマーカー」の解説
心筋保護作用を持つ一酸化窒素は、ある特定の酵素群(一酸化窒素合成酵素)により体内で生成される。またその他にも代替過程として、食物から摂取された無機硝酸塩が一酸化窒素へと還元される硝酸塩-亜硝酸塩ー一酸化窒素経路によっても一酸化窒素が生成される。代替過程による一酸化窒素生成の必須工程は、唾液腺の硝酸塩摂取および唾液中への排出、その後の口中の共生細菌による亜硝酸塩への還元となる。 唾液中亜硝酸塩は血中や組織中の化学作用により、さらに一酸化窒素へと還元され、血圧の低下や血小板凝集の抑制、脳血流および血流依存性血管拡張反応の上昇、運動時の酸素必要量の減少をもたらす。体内で一酸化窒素へと還元される無機硝酸塩の主な摂取源は、緑葉野菜である。緑色野菜(特に、ホウレンソウとルッコラ)の血圧低下作用は、ダッシュダイエットなどの降圧療法で効果的に使用される。いくつかの論文において、唾液中亜硝酸塩レベルは血中亜硝酸塩レベル(どちらも有意な血圧低下作用があるとされる)と相関することが証明されている。 またソブコ(Sobko)らにより、葉菜類が豊富に使用される伝統的な日本食が、血圧低下をもたらす血中および唾液中双方の亜硝酸塩レベルを上昇させることが確認されている。 2008年、ウェッブ(Webb)らにより、一酸化窒素を生成する上での人間の唾液の必要性が強調されている。健康な被験者が硝酸塩が豊富なビート汁を摂取することにより血圧が著しく低下することが確認された後、唾を吐いて唾液の量を減らす、または抗菌マウスウォッシュにより口中の食物性硝酸塩から亜硝酸塩への変換を阻害した場合、硝酸塩から亜硝酸塩、一酸化窒素への化学的還元は減少し、それに伴い血圧の低下力も弱まることが示された。唾液の循環の阻害、また唾液中硝酸塩の亜硝酸塩への還元の阻害は、血中の亜硝酸レベルの上昇の阻害、および血圧低下の阻害、また一酸化窒素媒介による血小板凝集の抑制の阻害ともなり、心筋保護作用は、唾液中の硝酸塩から亜硝酸塩への変換を経た一酸化窒素に起因することが証明された。 アルワリア(Ahluwalia)とその同僚による一連の論文では、14人のボランティアのクロスオーバー法により、無機硝酸塩を摂取後の3時間に血中および唾液中の亜硝酸塩レベルが上昇し、著しい血圧低下を伴うことが確認された。硝酸塩は唾液腺により血液中から抽出されて唾液中に蓄積され、直接的な血圧低下作用を持つ一酸化窒素に還元される。ボランティアの既に高まっている唾液中亜硝酸塩レベルを減少することにより、心臓収縮期(英語版)と心臓拡張期(英語版)の血圧が上昇することが確認された。前高血圧症患者は、硝酸塩-亜硝酸塩ー一酸化窒素経路の血圧低下作用に、より高感度である可能性がある。以上より、植物由来の硝酸塩から唾液中亜硝酸塩への生物変換の測定は、全身の一酸化窒素状態のバイオマーカーの代用となると考えられる。
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