レイプカルチャー論
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/11 06:45 UTC 版)
「レイプカルチャー」とは、性的暴力が普通のことと考えられていて、レイプ「しない」よう教えられるのではなく、レイプ「されない」よう教えられる文化のことである。1970年代にフェミニストが初めて用いたとされる。 ここでいう「レイプ」「性暴力」は「強姦」だけでなく、「同意されたわけでも拒否されたわけでもなく」「双方がそれぞれの望みをよくわかっていない」グレーな性的関係や、「ナンパ」などの声掛けも含まれる。具体的な主張は以下のようなものがある。 同意のない強姦があったとき、加害者よりも被害者の落ち度(服装や対応など)に注目され、予防に焦点があてられる。加害者には責任が一切なく、女性をモノ扱いして、レイプを防ぐ責任を負うよう求めている。 Stop Street Harassment(SSH)は、公共の場で男性が見知らぬ女性に対して一方的かつ気軽に性的誘いかけを行う世界は、男性が気軽にレイプできる世界と同じだと説明している。ナンパでは、女性は手に入る性的な対象であるだけでなく、手に入れるプロセスは一種のテクニックであり、ゲーム感覚で行える。女性をモノ扱いして媚びを売る文化、女性を人間ではなく、勝ち取るべき賞品のように扱う。 社会学者で京都大学名誉教授でありホワイトリボンキャンペーン・ジャパン共同代表の伊藤公雄は、性暴力の原因は「男性の支配欲」と「男女の関係の非対称性」だとする。男性は度胸があるところを見せるために万引きをしたり、仲間に弱気だと思われたくなくて暴力を振るうなど、金、学歴、地位、名誉などで男らしさを達成できないときに、その埋め合わせとして女性を支配する犯罪が行われる。また、男性は女性に依存しており、上から支配する対象であるか、下から憧れ甘える対象かのどちらかで、対等な人格をもった存在としての女性像をうまく組み立てられていないという。 このような状況では男女間で対等なコミュニケーションは成り立たず、女性は意に沿わない性行為に「私が被害を訴えたら、彼は社会的な立場を失ってしまうかもしれない」「失う地位の重みや犠牲を考えると、私さえ我慢すればいい」と、男性の立場を立てる形で忖度し、Noと言えない。圧倒的な上下関係や支配関係の中で、理不尽な目に遭わされ続けることで、自分の無力さに慣らされてしまうという。 このように、「ナンパや強姦といったレイプ・性暴力はカルチャー(文化)に原因・問題がある」などの主張が「レイプカルチャー論」である。
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