リンパ系フィラリア症の主な症状
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/11 10:37 UTC 版)
「八丈小島のマレー糸状虫症」の記事における「リンパ系フィラリア症の主な症状」の解説
リンパ系フィラリア症はヒトのリンパ系各所に寄生虫であるフィラリア虫が寄生することにより、さまざまな症状を引き起こす寄生虫病の総称である。 フィラリア虫は日本などの先進国では、イヌの心臓に寄生する寄生虫(犬糸状虫)がよく知られているが、ヒトやイヌだけでなく多種多様の脊椎動物ごとに寄生するフィラリア虫が多数存在する。これらの中でヒトに寄生するタイプのフィラリア虫は、主にヒトのリンパ管やリンパ節などに寄生することから、リンパ系フィラリアと呼んでヒト以外のフィラリア症と区別している。 ヒトがリンパ系フィラリア症に感染するメカニズムは、フィラリアの幼虫であるミクロフィラリア(microfilaria)を体内に宿す媒介者(ベクター)の役割を持つ蚊がヒトを吸血する際、ミクロフィラリアが人間の体内に侵入することによって成立する。媒介する蚊の種類は、イエカ属、ヤブカ属、ハマダラカ属などさまざまである。日本国内ではアカイエカ Culex pipiens pallensがおもな媒介蚊であった。 フィラリア虫の成虫はヒトのリンパ管内部に住み着き、6年とも8年とも言われる生存期間中、数百万匹ものミクロフィラリア(幼虫)を宿主の体内で産み、そのミクロフィラリアはヒトのリンパ系や血液中を循環する。媒介者の蚊は感染した終宿主であるヒトを吸血することにより、ミクロフィラリアを含む血液を取り込む。取り込まれたミクロフィラリアは蚊の体内で感染性を持つ幼虫に成長し、その蚊が再びヒトを吸血することによって感染力を持ったミクロフィラリアがヒトの体内へ侵入し、リンパ管へ移動して成虫になることで生活環が成立する。 このようにリンパ系フィラリア虫の生活環(ライフサイクル)は蚊が中間宿主であり、ヒトが終宿主である(右、図1参照)。 ヒトに発症するリンパ系フィラリア症の経過は、無症候期、急性期、慢性期があり、感染初期の罹患者は自覚症状がなく感染していることに気付かないことが多い(無症候期)。ただし、無症状であってもすでに罹患者はリンパ系組織各所や腎臓に障害を起こしており、人体の免疫機能への影響が始まっている。また、体内にミクロフィラリアがいても無症状のまま一生自覚症状が出ない場合もある。無症候期から急性期に進行する場合、感染から1年程度経過したころ、突然何の前触れもなく悪寒や高熱などの熱発作と戦慄を起こす。この最初の熱発作は数日間で治まるが、その後も悪寒や発熱を伴う熱発作を長期間にわたり何度も繰り返すことが多い。このようにフィラリア症と一口に言っても、その症状は一様ではない。適切な治療を行わないまま長期間放置すると、体内のフィラリア虫が成長・増殖して慢性期に入る。こうなってしまうと成虫になったフィラリア虫がリンパ管やリンパ節に居座り、リンパ液の流れを塞いでしまう。このようなリンパ液の閉塞による循環障害が引き金となり、リンパ系フィラリア症特有のさまざまな病状が現れる。 リンパ系フィラリア症の慢性期には、次に挙げる特有の症状が知られている。
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