ラグランジュ方程式とは? わかりやすく解説

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オイラー=ラグランジュ方程式

(ラグランジュ方程式 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/02/01 05:01 UTC 版)

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オイラー゠ラグランジュ方程式(オイラーラグランジュほうていしき、: Euler–Lagrange equation)は、汎関数の停留値を与える関数を求める微分方程式である。オイラーラグランジュらの仕事により1750年代に発展した。単にラグランジュ方程式、またはラグランジュの運動方程式とも呼ばれる。まれにオイラー方程式と呼ばれることもあるが、完全流体に関する運動方程式の名もオイラー方程式であるので、注意する必要がある。

ニュートンの運動方程式をより数学的に洗練された方法で定式化しなおしたものであり、物理学上最も重要な方程式の一つである。オイラー゠ラグランジュ方程式を基礎方程式としたニュートン力学の定式化をラグランジュ形式解析力学と呼ぶ。

概要

オイラー゠ラグランジュ方程式は、物理学における最大の指導原理の一つである最小作用の原理から導かれる。これは、運動エネルギーポテンシャルエネルギーの差を与える関数をラグランジアンと呼び、ラグランジアンの時間積分を作用と呼ぶとき、物理現象は作用を最小化(厳密には極小化)するように動くことを主張する原理である。オイラー゠ラグランジュ方程式は、最小作用の原理を満たす物体の軌跡を変分法で求めることによって導出された方程式である。

最小作用の原理はもともとはニュートン力学(さらにさかのぼれば光学におけるフェルマーの原理)で発見されたものだが、電磁気学相対性理論等でも成り立つ物理学の根本的な原理である。したがってそれらの分野においてもオイラー゠ラグランジュに相当する方程式を立式でき、その方程式はこれらの分野の基礎方程式[注釈 1]と等価になる[注釈 2]。このように最小作用の原理からオイラー゠ラグランジュ方程式に対応する式を得るという方針は、様々な基礎方程式に統一的な視点を与えることができる。

ニュートン力学の場合、ラグランジアンをルジャンドル変換することでハミルトニアン(エネルギーに対応する関数)が得られ、オイラー゠ラグランジュ方程式をハミルトニアンを使って書き直すことでハミルトンの正準方程式が得られる。これもニュートン力学における基本的な方程式の一つである。オイラー゠ラグランジュ方程式や正準方程式で記述したニュートン力学を解析力学という。なお、ニュートン力学以外の分野の場合、ラグランジアンからハミルトニアン(あるいはその逆)に容易に変換可能であるとは限らない。

また、新たな物理学の分野を探求する際、ラグランジアンやハミルトニアンを定義できれば、そこからオイラー゠ラグランジュ方程式や正準方程式に対応する方程式を定式化できることから、この方程式は未知の領域において基礎方程式を導出するための強力な手段となる。

一般化座標

ニュートンの方程式がデカルト座標を用いて運動を記述する必要があるのに対し、オイラー゠ラグランジュ方程式は任意の座標(一般化座標)を用いることができる。この点においてもオイラー゠ラグランジュ方程式の方がニュートンの方程式よりも本質的であることがわかる。[要出典]

またラグランジアンから一般化運動量、一般化力という、運動量と力を一般化した概念が定式化でき、これらを用いると、オイラー゠ラグランジュ方程式は一般化力(一般化運動量の時間微分)という形に書ける。ニュートンの運動方程式は、力(運動量の時間微分)であるので、オイラー゠ラグランジュ方程式はニュートンの運動方程式を一般化座標に拡張したものと捉えることもできる。

計算上の重要性

一般化座標を用いることができるという事実は、実際に運動を計算する際、有利に働く。例えば振り子の運動を考える場合、ニュートンの方程式ではデカルト座標を用いねばならない関係上、縦軸方向と横軸方向の2つの変数を必要とするため式が煩雑になるが、オイラー゠ラグランジュ方程式の場合は任意の座標系を用いることができるため、振り子の角度に着目することで、角度という1変数のみで運動を記述でき、より簡単な方程式が立てられる(ここでは振り子の長さは一定であると仮定している)。もちろんニュートン方程式で立式した後、極座標に変換すれば同一の式が得られるが、オイラー゠ラグランジュ方程式の利点はこのような煩雑な変換を施すことなく、角度に着目した方程式を最初から直接得られることにある。

数学における重要性

オイラー゠ラグランジュ方程式はシンプレクティック幾何学という、解析力学を起源とする数学の分野でも用いられる。またリーマン幾何学における測地線方程式は、曲線の長さをラグランジアンとした場合のオイラー゠ラグランジュ方程式である。なお、測地線は相対性理論では光の光路を表すので、これはフェルマーの原理の近代的な定式化になっている。

方程式の詳細

以上ではオイラー゠ラグランジュ方程式の物理学的な側面を説明したが、方程式そのものは物理学とは無関係に定式化できるので、まず物理学的な背景から離れて方程式を説明し、その後で方程式のニュートン力学的な解釈を説明する。

C1 級関数

解析力学におけるルジャンドル変換Thermodynamic square英語版を適用したときのオイラー゠ラグランジュ方程式。

ニュートン力学においては、関数


ラグランジュ方程式

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/07/14 01:15 UTC 版)

倒立振子」の記事における「ラグランジュ方程式」の解説

ラグランジュ方程式から運動方程式導出することもできる前掲の図のように、θ(t)長さ ℓ の振り子直立位置からの変位角とし、作用する力は重力および x 方向への外力 F とする。 x(t)台車位置定義すると、系のラグランジアン L = T − V は以下のように書ける。 L = 1 2 M v 1 2 + 1 2 m v 2 2m gcos ⁡ θ {\displaystyle L={\frac {1}{2}}Mv_{1}^{2}+{\frac {1}{2}}mv_{2}^{2}-mg\ell \cos \theta } ここで v1台車速度v2質量 m の質点速度とする。v1 および v2 は x と θ の導関数用いて次のように書ける。 v 1 2 = x ˙ 2 {\displaystyle v_{1}^{2}={\dot {x}}^{2}} v 2 2 = ( d d t ( x − ℓ sin ⁡ θ ) ) 2 + ( d d t ( ℓ cos ⁡ θ ) ) 2 {\displaystyle v_{2}^{2}=\left({\frac {\mathrm {d} }{\mathrm {d} t}}{\left(x-\ell \sin \theta \right)}\right)^{2}+\left({\frac {\mathrm {d} }{\mathrm {d} t}}{\left(\ell \cos \theta \right)}\right)^{2}} v2表式展開すると以下のようになるv 2 2 = x ˙ 2 − 2 ℓ x ˙ θ ˙ cos ⁡ θ + ℓ 2 θ ˙ 2 {\displaystyle v_{2}^{2}={\dot {x}}^{2}-2\ell {\dot {x}}{\dot {\theta }}\cos \theta +\ell ^{2}{\dot {\theta }}^{2}} すると、ラグランジアン次のように書ける。 L = 1 2 ( M + m ) x ˙ 2 − m ℓ x ˙ θ ˙ cos ⁡ θ + 1 2 m ℓ 2 θ ˙ 2 − m gcos ⁡ θ {\displaystyle L={\frac {1}{2}}\left(M+m\right){\dot {x}}^{2}-m\ell {\dot {x}}{\dot {\theta }}\cos \theta +{\frac {1}{2}}m\ell ^{2}{\dot {\theta }}^{2}-mg\ell \cos \theta } ここで、オイラー・ラグランジュの運動方程式次の表式である。 d d t ∂ L ∂ x ˙ − ∂ L ∂ x = F {\displaystyle {\frac {\mathrm {d} }{\mathrm {d} t}}{\partial {L} \over \partial {\dot {x}}}-{\partial {L} \over \partial x}=F} d d t ∂ L ∂ θ ˙ − ∂ L ∂ θ = 0 {\displaystyle {\frac {\mathrm {d} }{\mathrm {d} t}}{\partial {L} \over \partial {\dot {\theta }}}-{\partial {L} \over \partial \theta }=0} この方程式系における L に上の表式代入すると、倒立振子運動記述する方程式系次のように得られる。 ( M + m ) x ¨ − m ℓ θ ¨ cos ⁡ θ + m ℓ θ ˙ 2 sin ⁡ θ = F {\displaystyle \left(M+m\right){\ddot {x}}-m\ell {\ddot {\theta }}\cos \theta +m\ell {\dot {\theta }}^{2}\sin \theta =F} ℓ θ ¨ − g sin ⁡ θ = x ¨ cos ⁡ θ {\displaystyle \ell {\ddot {\theta }}-g\sin \theta ={\ddot {x}}\cos \theta } この方程式系は非線形であるが、制御系目標振り子直立に保つことなので、θ ≈ 0 近傍線形化することが多い。

※この「ラグランジュ方程式」の解説は、「倒立振子」の解説の一部です。
「ラグランジュ方程式」を含む「倒立振子」の記事については、「倒立振子」の概要を参照ください。

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