ホルスとセトの戦い
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/09 14:15 UTC 版)
「オシリスとイシスの伝説」の記事における「ホルスとセトの戦い」の解説
セトは、オシリスとイシスの息子ホルスも殺そうと考えた。イシスはホルスを守ろうと魔術を使うが、セトには敵わずホルスは殺されてしまう。ここで再びトトがホルスを助け、生き返らせることに成功した。 成長したホルスは、叔父セトへの復讐を決意した。ホルスとセトは、初めオシリスの正当な後継者は、どちらなのか神々の前で評定が開かれた。ラーがセトの肩を持つため、セトは不利にならなかった。そこでイシスは老婆に化けて、評定が行われた中の島への渡し守アンティに金の指輪を与えて騙し、中の島へ乗り込んだ。次にイシスは若い女性に化けてセトを計略にはめ、彼に「父の財産は息子が継ぐべきで、その財産を奪う者は追放する」という発言をさせた。セトは自分の正当性を自分で否定し、神々の支持を失った。 怒るセトは九柱の神々にアンティを罰させ、踵の皮を剥いでサンダルをぴったり履けなくした。アンティは金を呪うようになり、彼女の属する町では金が忌むべき物となった。またセトは、巨大な豚に姿を変えてホルスを襲った。神々の面前で行われたこの侮辱にラーは怒り、「豚は未来永劫、忌まわしい動物とせよ」と叫んだ。ラーは機嫌を損ねて裁判官の役割を放り出したが、ハトホルが自分の秘所をラーに見せて喜ばせ、彼を再び裁判官の役割に就かせた。 だがセトはそれを認めず、ホルスと共にカバに変身して川に潜り、先に陸に上がった者が負けという勝負を行った。イシスは銅の釣り針を水中に投じてホルスを援護しようとしたが、誤って釣り針を息子に引っ掛けてしまい、息子が苦しんだので針に命じて外させた。次はセトに針を引っ掛けることに成功するが、セトが「私とお前は同じ母から生まれた兄弟だろう」と彼女を言いくるめ、同情したイシスは釣り針を外した。これに怒ったホルスはイシスを追いかけ、その首を刎ね落とした。トートはイシスの死体をラーの元へ運び、イシスの体の上に雌牛の頭を置いて代用とした。 ラーはイシスを殺したホルスに罰を下し、またはセトがホルスの両目を奪って山中に埋め、その目からはロータスの花が咲いた。しかし、ハトホルが彼の眼窩に雌アカシカの乳を与えて復元させた。 その後もホルスとセトは激しい戦いを繰り広げ、復活したイシスは再び息子を守ろうとする。ホルスは左目を失ってしまうものの(この左目は長い間エジプト全土を旅し、様々な知見を得たとされる)、トートが月の力を借りてホルスの左目を癒した。その後、神々の助言によってホルスとセトは一時和解し、同居することとなる。しかし、セトがホルスに危害を加えたことから、助けに入ったイシスによってセトは両手を切り落とされる(ただし、後に復元した)。 最後の戦いでセトはホルスに対して、石の船を作って勝負することを持ちかけた。セトは石の船を作るが、ホルスは杉の木を漆喰で覆った船を作った。そのためセトの船は水に沈み、ホルスの船は水に沈まなかった。しかし、セトはカバに変身して水中からホルスを殺そうとしたが、ホルスはセトに槍を突きつけ睾丸と片足を奪った。このようにして、最終的にホルスが勝利し、父の仇討ちを果たすことに成功する。 オシリスはトートとの相談の末、地上の王権をホルスに譲位することができた。これ以来、地上を統治する王(ファラオ)は「ホルスの化身」と見なされるようになった。
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