ファロ_(トランプ)とは? わかりやすく解説

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ファロ (トランプ)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2016/03/12 14:51 UTC 版)

ファロ英語: Faro /ˈfɛr.oʊ/)は、トランプを使って行う賭博の一種である。ルールはきわめて単純で、ルーレットに似た、純粋に偶然に頼るギャンブルであるが、18世紀から19世紀にかけて欧米で流行した。カサノヴァの愛したゲームとして知られる。

現在はブラックジャックバカラなど、ほかのゲームに押されて廃れてしまっているが、ファロの出てくる文学作品は数多い。

歴史

ファロはフランスで17世紀の終わりに、ヴェネツィアから伝わったバッセッタ(イタリア語: bassettaフランス語: bassette)というゲームをもとに考案された。フランスではファラオン(Pharaon)すなわちファラオという名前で呼ばれていた。当時のフランスのトランプのキングの1枚がファラオの姿をしていたためにこの名がついたと言われる[1]

アメリカ合衆国には19世紀に伝わり、名前は短縮されて「ファロ (faro)」に変化した。かつてはカジノの主要なゲームのひとつであった。

ルール

ファロのレイアウト

競技に参加する人数は何人でもよい。ひとりのバンカーと、それ以外の客によって遊ばれる。

通常の52枚のトランプを使用する。それとは別に、賭けるためのレイアウト用のカードとして、スペードの13枚を使用する。レイアウト用のカードは表向きにテーブルの上に並べられ、客はこの中の1枚にチップを置く。ファロではカードのスートには意味がなく、ランクだけが問題になる。

バンカーは、52枚のカードをシャッフルし、客のひとりがそれをカットする。バンカーはそのカードを裏向きの山札として自分の前に置く。

まず、バンカーは山札の1番上のカードを自分の左に表向きに出す。このカードはソーダ(soda)と言って、勝敗には無関係である。

バンカーは次の2枚のカードを表向きにする。1枚目は自分の右に、2枚目は自分の左に(ソーダの上に)置く。この2枚を出す行為をターン (turn) という。バンカーが右に出したカードのランクに賭けていた客は負けとなり、チップは没収される。左に出したカードのランクに賭けていた客は勝ちとなり、賭け金と同額をバンカーから得る。それ以外に賭けられていたチップはそこに置いたままになり、客が賭けを取り下げないかぎり、次回のターンに使われる。

右に出したカードと左に出したカードのランクが等しい場合は、スプリット (split) といって、そのランクに賭けていたチップの半額がバンカーのものになる(全額がバンカーのものになる方式もある)。

チップのやりとりが終わったら次のターンにはいり、これを山札がつきるまで繰り返す。ひとつのターンと次のターンの間に新たな賭け金を置くことも可能である。最後のターンのあと余った1枚 (hoc) は使用しない。

バンカーがそれまで何のカードを出したかは、ケースキープ (case keep) というアバカスのような道具に記録される。これによって、残りのカードにどのランクが何枚含まれているかを知ることができる。

残りが3枚だけになったら、その3枚がどの順序になっているかに賭けることができる。正確な順序を当てた人には賭け金の4倍が与えられる(当たる確率は1:6なので、この配当はバンカーにとって得になる)。ただし3枚のうち2枚が同じランクである場合は、与えられるのは2倍になる。

チップの上に「銅貨 (copper)」と呼ばれるトークンを置くと、右と左の意味が逆になることを意味する。すなわち、バンカーの右に出たカードと一致するときに勝ち、左に出たカードと一致するときに負ける。

実際には単一のカードに賭けるだけでなく、ルーレットと同様にさまざまな賭け方がある。またカジノではさまざまな専用の装置を使用することがあるが、省略する。

ファロと数学

ファロやその前身のバッセッタでバンカーがどの程度有利かについては、何人かの数学者が興味を示している。

ダニエル・ベルヌーイの「Exercitationes Quaedam Mathematicae」(1724)がファロの確率の問題を含んでいるほか、オイラーも論文を書いている[2]

「スペードの女王」とファロ

プーシキンスペードの女王は、ファロの勝負が作品全体の主要なテーマである。

最初の夜には右に9が、左に3が出る。ヘルマンは3に賭けていて勝つ。次の夜には右にJが、左に7が出る。ヘルマンは7に賭けていて勝つ。3回目には右にQが、左にAが出る。ヘルマンはAに賭けていて勝ったはずだったが、実際に賭けていたのはQであったため、全財産を失う。

この作品に出てくるファロは、レイアウトに使うカードを全員が共有するのではなく、各人が1スート13枚のカードを持っていて、その中から賭ける1枚を裏向きに出すもので、アメリカと異なりヨーロッパではこの方法が主流だった。

作品中のキーワードである「3-7-A(1)」という数字の並び自体がファロから来ているとも考えられる。賭けにあたった場合、儲けは賭け金と同額(1倍)だが、元手に儲けを加えてさらに賭けることができ(このような賭け方をパロリ (paroli) という)、そこで再びあたったら儲けは最初の賭け金の3倍になる。同じことをもう一度繰り返せば7倍になる。つまり当たるたびに「1-3-7-」と増えていく。

その他の文学への影響

ファロの出てくる文学は多いが、日本ではファロになじみが少ないため、単に「カード賭博」などと翻訳されていることが多い。

脚注

  1. ^ Parlett (1992, 2004) p.149
  2. ^ Sur l'avantage du banquier au jeu de Pharon

参考文献

  • Parlett, David (1992, 2004). The A-Z of Card Games. Oxford University Press. p. 149. ISBN 9780198608707. 

外部リンク


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