ビュッフェ(フランス)式
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/16 09:17 UTC 版)
「ファゴット」の記事における「ビュッフェ(フランス)式」の解説
ビュッフェ式ファゴットは、ヘッケルよりも幾分早く基本的な音響特性を獲得した。その後、より保守的な形で発展を続けた。ヘッケル式ファゴットの初期の歴史には音響学とキー機構の両面で楽器の全面的な見直しが含まれていたが、ビュッフェ式の開発は主にキー機構の段階的な改良から成っていた。この必要最低限度の取り組み方によって、ヘッケル式に見られるイントネーションの一貫性、操作のしやすさ、パワーの向上は得られなかったが、ビュッフェ式の方が声質や表現力に優れていると考える者もいる。指揮者のジョン・フォウルズは、ヘッケル式ファゴットはホルンとの音の同質性が高すぎると考え、ヘッケル式が優勢であることを1934年に嘆いた。現代のビュッフェ式は22のキーを持ち、その音域はヘッケル式と同じであるが、ビュッフェ式の方が高音域での機能性が高く、はるかに簡単にかつ空気抵抗も少なくE5とF5に到達する。 ヘッケル式と比較して、ビュッフェ式はより細いボアとより単純な機構を有しており、多くの音について異なる、しばしばより複雑な運指が要求される。ヘッケル式とビュッフェ式の持ち替えには大がかりな再訓練が必要である。フランスの木管楽器の音色は一般に他に比べて声質が高く、ある程度の「エッジ」を持っており、ビュッフェ式ファゴットも例外ではない。この音はビュッフェ式ファゴットのための作曲に効果的に利用されているが、ヘッケル式の音色に比べると、他と溶け合う傾向は低い。他のファゴットと同様に、楽器、リード、演奏者によって音色は大きく異なる。劣った奏者の手では、ヘッケル式ファゴットは平坦で木のような(硬い)音がするかもしれない、優れた奏者は、生き生きとした歌うような音色を奏でることができる。逆に、下手に演奏されたビュッフェ式はうなり声や鼻声のように鳴るが、優れた奏者は暖かく表情豊かな音を奏でることができる。 イギリスはかつてフランス式を好んでいたものの、ビュッフェ式の楽器はもう作られておらず、フランス式の最後の著名なイギリス人奏者は1980年代に引退した。ただし、一部の地域で継続的に使用され、その独特の音色により、ビュッフェ式は、特に発祥地のフランスで、現代のファゴットの演奏において引き続き地位を占めている。現在、ビュッフェ式ファゴットは、ビュッフェ・クランポンとアトリエ・デュカス(フランス、ロマンヴィル)によってパリで製作されている。セルマー社は2012年頃にフランス式ファゴットの製造を中止した。
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