ヒ素の毒性
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/04/22 07:18 UTC 版)
詳細は「ヒ素中毒」を参照 ヒ素は世界中で死亡の原因となっており、心臓、呼吸器、消化器、肝臓、神経、腎臓などの疾患がそれに関連している。 ヒ素は、必須の代謝酵素であるピルビン酸デヒドロゲナーゼ複合体をアロステリックに阻害することで細胞の寿命を縮める。ピルビン酸デヒドロゲナーゼ複合体は、NAD+を利用したピルビン酸のアセチルCoAへの変換を触媒する酵素である。この酵素の阻害によって、細胞のエネルギーシステムが破壊され、アポトーシスが引き起こされる。臨床的には、ヒ素はチアミンの利用を阻害し、チアミン欠乏症に類似した症状となる。ヒ素中毒は、乳酸のレベルを上昇させ、乳酸アシドーシス(英語版)となる。 ヒ素の遺伝毒性には、DNA修復の阻害とDNAのメチル化が関与している。ヒ素の発がん性は、ヒ素によって誘導される酸化ストレスによるものである。 ヒ素の高い毒性は、塩化ジメチルアルシン (dimethylarsenic chloride) のようなさまざまなヒ素化合物の化学兵器としての開発につながり、そのいくつかは主に第一次世界大戦で実際に使用された。この化学兵器の脅威のために、解毒剤について多くの研究がなされ、ヒ素化合物と生体の相互作用についての知識は拡大した。その結果の1つとして、British anti-Lewisite (ジメルカプロール) などの解毒剤が開発された。このような解毒剤の多くはヒ素(III)のチオラートへの親和性を利用し、毒性の高い有機ヒ素化合物を毒性の低い誘導体へ変換するものである。 一方でこれとは対照的に、ヒ素酸化物は急性前骨髄球性白血病 (APL) の効果的な化学治療薬として承認されている。
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